【5月13日 AFP】観光客や旅行者による子どもへの性的虐待は、防止に向けた過去20年間の取り組みの裏をかくように全世界で深刻化しているとする報告書が12日、タイ、南アフリカ、米首都ワシントン(Washington D.C.)で発表された。吐き気を催すような記載もあるこの画期的な報告書をまとめた調査チームは「こうした犯罪が起きていない地域はなく、責任を免れる国もない」と結論付けている。

 国連(UN)の支援を受けて作成された報告書「Global Study on Sexual Exploitation of Children in Travel and Tourism (旅行や観光による子どもの性的搾取に関する世界調査)」は、児童福祉当局や慈善団体、研究機関など70以上の専門家が参加して作成され、この分野の報告書としては最も包括的な調査が行われている。

 報告書の執筆者らは、性的虐待が容易に行えるようになりこの問題をまん延させた要因として、格安の旅行手段と性的虐待者間の情報共有を可能にした最新テクノロジーの2つを挙げた。一般の人々や警察の児童買春を目的とするツアーについての認識は時代遅れになっていることが多いという。

 児童性的虐待者の中で「欧米の裕福な中年の白人男性」はもはや典型的なタイプではなく、その多くは自らを常習的な小児愛者だとは認識していないとみられるという。

 東南アジアでの被害者は、日本や中国、韓国からの観光客など、地元や比較的近い地域からの旅行者のターゲットとなる場合が多い。その主な理由は、東南アジア各地を旅行する人はこうした地域から来た人が圧倒的に多いからだという。

 しかし、複数の児童保護団体は、東南アジアでは欧米に比べて政府が協力的ではないと指摘している。児童虐待について調査しているカンボジアの団体APLEの代表者は、中国人が絡むケースを多数調査したが、中国当局が捜査や自国民の起訴に踏み切ったケースは一件もないと語った。近隣諸国の政府や法施行機関の多くも同様だという。

 かつて児童買春を目的とした観光客の出身地として知られていた欧州は、現在ではこうした旅行の目的地の一つとなっている。特に、児童保護法制が整備されていない中東欧の一部の国でその傾向が強い。

 また、性的搾取者らが遠隔地で虐待に及ぶケースが増加している。研究チームは、未確認ながらミャンマーやラオス、モルドバ、ペルー、太平洋の一部の島しょ国で性的虐待のため買われる子どもが増えているという情報があるとしている。(c)AFP/Aidan JONES