【5月5日 AFP】優勝オッズ5000倍の下馬評をものともせず、イングランド・プレミアリーグ制覇を果たして世界を驚かせたレスター・シティ(Leicester City)だが、今後の課題は現在の地位をいかにして保つかということになる。そこでAFPは、クラブ初挑戦の欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2016-17)に向けた準備をはじめ、クラウディオ・ラニエリ(Claudio Ranieri)監督がこれから直面するであろう問題をまとめた。

■主力の引き留め

 ジェイミー・バーディー(Jamie Vardy)、リヤド・マフレズ(Riyad Mahrez)、ヌゴロ・カンテ(N'Golo Kante)といった主力のほとんどは、加入当時は無名で移籍金も格安だった。

 そんな彼らも、今では誰もがその名を知る有名選手となり、レスターが今夏の移籍市場で彼らを引き留めるのは難しい仕事になるかもしれない。

 エースストライカーのバーディーと輝きを放つウインガーのマフレズは、シーズン中にクラブとの契約を延長しているものの、ライバルクラブが巨額のオファーを準備しているとうわさされている。そしてフランスのカーン(SM Caen)から加入し、レスターの中盤に君臨したカンテは、複数のビッグクラブから狙われていると伝えられている。

■賢い補強

 チェルシー(Chelsea)での仕事ぶりから、「修理屋」の異名を取るラニエリ監督だが、今季はほぼ不動の先発メンバー11人に対する信頼を貫き、ほかのどのクラブよりも少ない選手でシーズンを戦ってきた。

 しかし、来季はチャンピオンズリーグに挑戦する以上、選手層の拡大は欠かせない。また、2シーズン連続で主力に故障者が出ないという幸運に恵まれるというのも考えづらい。

 昨季から今季にかけてチーム内に醸成されていった唯一無二の一体感を失わず、同時に現在のメンバーに欠けているチャンピオンズリーグの経験を加えるのは容易ではない。

 会計事務所デロイト(Deloitte)でスポーツビジネス部門を担当する金融コンサルタントのティム・ブリッジ(Tim Bridge)氏は、「巨額の資金を投じれば、間違ったタイプの選手が寄ってきてしまう可能性もあります。夢と健全な投資とのバランスを取る必要があるでしょう」と警鐘を鳴らす。

 その一方で、ラニエリ監督は「われわれにスーパースターは必要ない」と大型補強を否定している。

■勢いの持続

 レスターの快進撃は、2015年4月から始まっている。ナイジェル・ピアソン(Nigel Pearson)前監督の下、チームはリーグ戦最後の9試合で7勝を記録し、最下位から一気に14位まで順位を上げてシーズンを終えた。

 そしてその勢いは、ラニエリ監督が就任した今季の快進撃につながっていったわけだが、過去を振り返ると、まさかの優勝を果たしたチームが、その後も好成績を残した事例はほとんどない。

 1994-95シーズンにプレミアリーグで優勝したブラックバーン・ローバーズ(Blackburn Rovers)は、翌シーズンは7位に順位を落とすと、4年後には降格。イタリア・セリエAで1985年に優勝したエラス・ベローナ(Hellas Verona)も、翌シーズンは10位で1990年に降格している。

 フランス・リーグ1のモンペリエ(Montpellier HSC)は、11-12シーズンにパリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)を抑えてリーグ制覇を成し遂げたものの、翌シーズンは10位に終わった。

 レスターについても、リーグ連覇を予想する声はまったく上がっておらず、苦戦を予想する声が出ている。いずれにせよ、一気に転落することだけは何としてでも避けなくてはならない。

■対策への準備

 2015-16シーズンは驚きのリーグ制覇を果たしたレスターだが、来季は各チームがレスター対策を練ってくるだろう。

 ラニエリ監督のチームが今季、相手の隙を突く速攻で勝利を積み重ねるなかで、対策の兆候はすでに出始めており、最近のレスターに対してはリスクを負った攻めを避け、どちらかといえば守備的に戦うチームも出てきている。各チームはすでに、バーディーとマフレズにスピードを生かすスペースを与えてはいけないことを理解している。

 そのため、来季はより緻密な戦術を構築する必要が出てくるだろう。ラニエリ監督が持ち込み、チームにうまくはまった4-4-2に替わるオプションを用意しながら、場合によっては、ハードワークを身上とするカンテとダニー・ドリンクウォーター(Danny Drinkwater)のほかに、根気よく相手の守備のギャップを突けるテクニシャンタイプの選手も必要になってくるだろう。

■地に足をつける

 ラニエリ監督は過去9か月、チーム周辺に渦巻く期待を見事にコントロールしてきた。チームの目標を段階的に引き上げ、タイトルがほぼ手中に収まったといえる段階まで、優勝を話題にしようとしなかった。

 選手たちの周囲は現在、すさまじいまでの大騒ぎになっているが、選手がそれで自らを見失うようなことを避けたいのであれば、ラニエリ監督は、今季と同じ冷静さを来季も保つ必要がある。

 とはいえ、ラニエリ監督はすでにその作業を始めており、来季はリーグ戦10位以内という控えめな目標を設定している。(c)AFP/Tom WILLIAMS