【4月28日 AFP】スペインの研究チームは27日、皮膚細胞からヒト精子の作製に成功したと発表した。将来的には不妊症治療につながる可能性もあり、大きな医学的成果だという。

 不妊症は世界の夫婦の約15%にみられる。自分たちで子どもをもうけることが不可能な夫婦にとって、提供された精子や卵子を使用することが現時点での唯一の選択肢となっている。

 スペイン初の介助出産専門の医療機関、バレンシア不妊治療機関(Valencian Infertility Institute)のカルロス・シモン(Carlos Simon)研究部長は「子どもを持ちたいと願う人に、配偶子(精子や卵子)がない場合には、どう対処すべきだろうか」と問いかける。

「配偶子を持たない人々が、配偶子を作れるようにする。これが、われわれが解決を目指している問題だ」(シモン氏)

 米スタンフォード大学(Stanford University)と共同で実施された今回の研究の成果は、26日の英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表された。

 今回の研究については、成熟した細胞を多能性細胞に再プログラムできることを発見し、2012年にノーベル医学生理学賞(Nobel Prize for Medicine)を同時受賞した京都大学(Kyoto University)の山中伸弥(Shinya Yamanaka)教授と英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)のジョン・B・ガードン(John B. Gurdon)氏の研究からの着想を得た。

 シモン氏率いる研究チームは、配偶子の形成に必要な複数の遺伝子を導入して、成熟した皮膚細胞を再プログラムすることに成功した。

 この処理により、皮膚細胞は1か月以内に、精子や卵子に分化可能な生殖細胞になるように変換されることを研究チームは発見した。だがこれらの生殖細胞は、受精能力を持っていなかったという。

 シモン氏は「これは精子だが、配偶子になるためには、さらなる成熟段階を経る必要がある。これはまだ初期段階にすぎない」と話す。

 なお、この技術は、現時点では一部の国でしか許可されていない人工胚の作製を伴うため、研究者らは法律上の制約を考慮する必要がある。このことについてシモン氏は「われわれは、長期的なプロセスの話をしているのだ」と指摘している。(c)AFP