【5月8日 AFP】大量生産の波に押されて一度は廃業したフランス・パリ(Paris)の家族経営の自転車メーカーが、富裕層向けのマストアイテムと銘打ったハンドメード自転車のブランドとして再生した。

 1912年創業の「メゾン・タンボワット(Maison Tamboite)」。全盛期には、女優のマレーネ・ディートリッヒ(Marlene Dietrich)や俳優のモリス・シュバリエ(Maurice Chevalier)、歌手のエディット・ピアフ(Edith Piaf)やジョセフィン・ベイカー(Josephine Baker)といった銀幕や音楽界のスターたちが上客だった。だが「祖父は自分の客を自慢することはなかった」と、フレデリック・ヤストゥルゼブスキ(Frederic Jastrzebski)さんは言う。

 1980年代になって会社を畳んだのは叔父だった。自転車の大量生産が始まり、スーパーマーケットでさえも売られるようになっていた。ヤストゥルゼブスキさんは20年間金融業界で働いた後、50歳になった2014年、兄夫婦と自分の妻に対し、「昔と同じように心が込もった丁寧な職人技で、本物を目指し完璧さを追求する自転車ブランドをよみがえらせよう」と説得した。

 今、ヤストゥルゼブスキさんは経済的に余裕のある層をターゲットに、「都会的な美」を打ち出した自社製自転車のセールスに自ら奔走している。1台何と1万1000ユーロ(約130万円)、電気自転車なら1万5500ユーロ(約190万円)だ。乗る人に合わせて15か所もの寸法を調整しながら、1台を仕上げるのに3か月かかる。

 同社がただ一人雇用している自転車職人のユゴー・カニベンク(Hugo Canivenc)さんは、「ジュエリー製作と似た仕事。同じような緻密さが要求される」と話している。(c)AFP/Katia DOLMADJIAN