仏大統領、テロ犯から国籍剥奪の改憲を断念
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【3月31日 AFP】フランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領は30日、昨年11月のパリ(Paris)同時テロ事件を受けて提案していた憲法改正案を撤回した。同案には、テロ関連の罪で有罪となった者から仏国籍を剥奪する内容などが含まれ、無国籍者を生む恐れをめぐる激しい議論を生んでいた。
オランド大統領はまた、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が130人を殺害したパリの事件を受けて発令された非常事態宣言を憲法に盛り込む意向を示していた。だが、国民議会(下院)と、野党が多数を占める上院は、憲法改正の採択に必要な条件とされる具体的な文言についての合意に至らなかった。
同大統領は「テロリストの国籍剥奪に関して妥協に達することはできそうにない」と表明。すでに苦境に陥っているオランド政権は、屈辱的な方針転換を強いられた形となった。
オランド大統領が当初打ち出した改憲案は、テロ関連の罪で有罪判決を受けたフランス生まれの二重国籍者から仏国籍を剥奪する内容だった。フランスでは数百万人単位の国民が二重国籍を持っており、改憲案は市民を2つに分類するものだとして、与党社会党からも批判が巻き起こった。
世論調査によると、テロに対する不安を抱える仏国民の大半は改憲案を支持していたが、クリスティアーヌ・トビラ(Christiane Taubira)前法相(63)はこれに強く反対し辞任した。
政府はその後、修正案で国籍剥奪の条件から「二重国籍」の文言を削除。これが、無国籍者を作り出す恐れがあるとの批判を呼び、当初改憲を支持していた右派・極右の両勢力も反対姿勢に転換した。(c)AFP/Fran BLANDY