【4月30日 AFP】イタリア・トスカーナ(Tuscan)州フィレンツェ(Florence)の歴史的建造物に「××参上」などと落書きを残す時代は終わった。どうしても落書きせずにはいられないという人のために、落書き専用アプリが登場したからだ。そのアプリで書かれたメッセージも、後世まで保存されていくという。

 同市にあるサンタマリア・デル・フィオーレ(Santa Maria del Fiore)大聖堂の一角にそびえる、白、緑、ピンクの大理石で建造されたゴシック様式の「ジョットの鐘楼(Giotto's Campanile)」。ここで落書きをもくろむ観光客の前に置かれているのは、タブレット端末だ。

 冒頭の画面に「ジョットの鐘楼へようこそ!」とメッセージが出る。さらに「私たちは何世紀もの間、偉大な名建築を守り続けてきました。これから鐘楼の壁の落書きを消去していきます。ただし、バーチャルな形でメッセージを残して下されば名建築同様、保存していきます」と書かれている。

 鐘楼は、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)である同市歴史地区に含まれている。赤い屋根の家々が広がる街並みを見ようと、400段の階段を上る人々が書いた何百万ものメッセージによって、14世紀に造られた壁の美観は損なわれてきた。

 同市の多数の歴史的建造物の保存活動に取り組んでいる非営利組織(NPO)、「オペラ・ディ・サンタマリア・デル・フィオーレ(Opera di Santa Maria del Fiore)」のソーシャルメディア部長、アリス・フィリッポーニ(Alice Filipponi)氏らは、今回初めて大規模な壁の洗浄を行うに当たり、またすぐに同じ状態に戻ってしまわないようにするためにはどうすればよいか知恵を絞ったという。そして観光客がどんな下地に(例えば大理石か木なのか)、どんな画材で落書きするか(フェルトペンか、絵筆か、スプレーかなど)を選んで、言葉や絵をデータで残せるアプリを思いついた。