【3月15日 AFP】(写真追加)欧州の囲碁チャンピオン、ファン・フイ(Fan Hui)氏(35)は昨年10月、米グーグル(Google)傘下の企業が開発した囲碁の人工知能(AI)「アルファ碁(AlphaGo)」と英ロンドン(London)で対局し、完敗した。ファン氏の情熱であるばかりか、一生の仕事でもある囲碁の対局でコンピューターに敗れたのだ。

 ファン氏は、先週から韓国ソウル(Seoul)で始まったアルファ碁と現代最強の囲碁棋士とされる韓国のプロ囲碁棋士・李世ドル(イ・セドル、Lee Se-Dol)氏との対局の審判を務める。

「私は、コンピューターのプログラムに敗れた初めてのプロの囲碁棋士になった。つらかった」と、ファン氏はソウルでの対局を前にAFPに語った。「最初は、負けるなんて想像もしなかった」

 最も複雑なゲームといわれる囲碁は、指し手が無数にあり、勝つためには人間の「直感」に似た何かが必要とされる。

 アルファ碁の特徴は、対戦経験から学習し、自らを改善するようにできていることだ。膨大な対局を通して試行錯誤を繰り返し、当初プログラミングされていた戦略に磨きをかけた。

「5か月たって、私の気分はかなり良くなった」と、ファン氏。自らの敗北について、ロンドンでの5日間のアルファ碁との対局中に徐々にストレスがたまっていき、自信を失くし、ミスが出始めたのだと語った。

「コンピュータは、その一方、冷静にプレイしていた」とファン氏は振り返る。「大きなミスを犯さなかったし、ストレスを一切感じていなかった」

 ファン氏が敗北するまで、コンピュータの囲碁は人間より少なくとも10年は遅れていると考えられていた。通説によると、囲碁は宇宙に存在する原子の数よりも多くの棋譜が考えられ、AIにとってはチェスよりも難しい挑戦だとされている。チェスでは、AIはすでに人間に勝っている。

 当初悪くても4勝1敗で勝利すると自信を見せていた李氏だが、この勇気は直前になってなえていたようだ。アルファ碁に3連敗した後、13日の第4局に勝って一矢を報いた李氏は15日、最終戦となる第5局に臨む。(c)AFP/Pascale MOLLARD-CHENEBENOIT