【3月9日 AFP】新生児に脳損傷を、成人に稀な神経系疾患を引き起こす疑いがあるジカウイルスについて、今度は、まひを引き起こす脊髄炎との関連が指摘された。研究報告が8日、発表された。

 仏専門家チームの報告によると、カリブ海の仏海外県グアドループ(Guadeloupe)島で、1月に急性脊髄炎と診断された15歳の少女の脳脊髄液、血液、尿などから高濃度のジカウイルスが検出されたという。

 この患者について、同島にあるポアンタピートル大学病院センター(University Hospital Center Pointe-a-Pitre)のアニー・ラニュゼル(Annie Lannuzel)氏はAFPの取材に、中南米とカリブ諸国に広まっているジカウイルスと脊髄炎との関連の証拠を示す、公表された初の症例だ」と語った。

 今回の症例に関する詳細を記載した研究論文は、英医学誌ランセット(Lancet)に発表された。

 ラニュゼル氏と研究チームは、症例報告の中で、最近まで、ジカ熱は人間に軽症の感染症を引き起こすと考えられていたが、実際はそうではなく、「今回の急性脊髄炎患者の脳脊髄液中にジカウイルスが存在することは、これが(中枢神経系を侵す)向神経性ウイルスである可能性があることを示唆している」と記した。

 蚊が媒介するジカウイルスは通常、成人に微熱や頭痛、関節痛などの軽い症状を引き起こすが、より重篤な健康問題との関連性が観察されたことから、同ウイルスの急速な拡大に対する懸念が広がっている。

 性感染の事例も、ごく少数ながら報告されている。また先週には、ジカウイルスと新生児の先天異常である小頭症との生物学的な関連性を示す初の証拠を発見したとする研究が発表された。小頭症は、胎児の脳に重度の変形を引き起こす。

 研究によると、胎内での脳の発達に関与する主要細胞をジカウイルスが攻撃し、破壊または無能化することが実験で確認されたという。

 また、同じく先週に発表された別の研究では、ジカウイルスがギラン・バレー症候群(GBS)の原因となる可能性があることの証拠も提示されている。GBSは、体内の免疫系が筋力を制御する神経系の一部を攻撃する稀な疾患だ。

 脊髄炎は脊髄に起こる炎症で、脊髄と体の他の部位との連絡が遮断されることで、手足の動きに影響が及び、まひが発生する恐れがある。