【3月3日 AFP】子どもの誕生や応援するスポーツチームの大勝など、うれしい出来事が「ブロークンハート症候群」と呼ばれる危険な心筋疾患を引き起こす恐れがあるとの研究結果が3日、発表された。

 ブロークンハート症候群は、酸素を豊富に含む血液を全身に送り出す左心室の底部が異常に膨張し、心筋の働きが突然弱まる疾患。激しい胸の痛みと息切れの他、心臓発作を起こして死に至ることもある。膨張した心腔がタコを捕獲する日本伝統の罠に似ていることから、「たこつぼ症候群(TTS)」としても知られる。

 この疾患についてはこれまで、配偶者の死や激しい口論といった、多くは不愉快な出来事による、予期せぬ精神的ショックが発作の引き金になる恐れがあると考えられてきた。

 しかし、スイス・チューリヒ大学病院(Zurich University Hospital)の研究者クリスチャン・テンプリン(Christian Templin)氏とジェレナ・ガドリ(Jelena Ghadri)氏は、この疾患がうれしい出来事によるショックでも同様に引き起こされるのではと考え、2011年に世界の医療機関をつなぐTTSの登録システムを立ち上げた。

 システム立ち上げから5年後、世界9か国25医療機関からなる同ネットワークには、統計的に有意な1750人の患者についてのデータが集まった。テンプリン氏とガドリ氏率いる16人の研究チームは、このうちの485件について精神的ショックが同疾患の原因だったとの結論に達した。

 そして、このグループの約4%にあたる20人は、うれしい出来事が原因で疾患を経験した可能性があるという。研究者らはこれらのケースについて「ハッピーハート症候群」を患ったとも言えるとしている。

 研究結果によると、「ブロークンハート症候群」と「ハッピーハート症候群」双方のグループでは、患者全体の95%を女性が占めた。大半は60代後半だった。

 ガドリ氏はAFPに対し、TTSが女性で圧倒的に多い理由はまだ分かっていないと説明。ただ、「唯一考えられるのは、エストロゲンというホルモンの状態が、この疾患のメカニズムで何らかの役割を果たしている可能性があるということだ」とコメントしている。(c)AFP/Marlowe HOOD