【2月23日 AFP】米航空宇宙局(NASA)は、1969年の月周回飛行中に宇宙飛行士らが聞いたと報告した奇妙な「音楽」の録音を公開した。宇宙飛行士らはこの時、地球と無線通信ができない月の裏側にいたという。

「ヒューヒュー」と聞こえるこの不可思議な音の話は、米ケーブルテレビのディスカバリーチャンネル(Discovery Channel)で21日夜に放送された番組「NASA超常ファイル(NASA's Unexplained Files)」で紹介された。

 この音は1969年5月、月を周回飛行していたアポロ10号(Apollo 10)の宇宙飛行士らが聞いたと報告されている。その2か月後の同年7月21日、人類初の宇宙飛行士が月面に降り立った。

 アポロ10号には、トーマス・スタッフォード(Thomas Stafford)氏、ジョン・ヤング(John Young)氏、ユージン・サーナン(Eugene Cernan)氏の3人の宇宙飛行士が乗船していた。

 約1時間続いたその音は録音され、米テキサス(Texas)州ヒューストン(Houston)にある地上管制センターに送信された。

 飛行士らの会話の筆記録は2008年に公開されていたが、実際の音声は今回初めて公開された。

 サーナン氏は「聞こえるか。ヒューヒューという音だ」と問いかけ、音については「宇宙空間系の音楽」と表現している。

 ディスカバリーチャンネルの番組によると、3人はこの音があまりに奇妙に感じられたため、NASAの長官らに伝えるか否かを悩んだという。それは、報告をまともに受け止めてもらえず、今後の宇宙ミッションから自分たちが除外されることへの懸念からだった。

 NASAは、この音について「宇宙人の音楽」だった可能性はないとしている。NASAの技術者の説明によると、互いに近くにある月着陸船と司令船の無線電波が起こした干渉で生じた雑音だった可能性が高いという。

 アポロ11号(Apollo 11)の司令船操縦士、マイケル・コリンズ(Michael Collins)氏は、自身も「不気味なヒューヒュー音」を聞いたが、無線の干渉によるものという説明に異論はないと述べている。コリンズ氏は、バズ・オルドリン(Buzz Aldrin)氏とニール・アームストロング(Neil Armstrong)氏が月面を歩いている間に、月の裏側を単独で周回飛行していた。この単独での飛行も人類初となった。

 実際に、コリンズ氏は事前に注意を受けていたと、自身の著作「Carrying the Fire: An Astronaut's Journeys」に記している。

 同著には、「前もって注意を受けずにその音を聞いていたら、腰が抜けるほど怖い思いをしただろう」「幸いなことに、その音については(UFO愛好家ではなく)無線通信技術による説明が前もって用意されていた。それは、月着陸船と司令船のVHF無線の間で起きる干渉だった」とある。(c)AFP