【2月17日 AFP】(更新)仏パリ(Paris)で昨年11月に発生した同時テロ事件に巻き込まれた米ロックバンド「イーグルス・オブ・デス・メタル(Eagles of Death Metal)」が16日、同市で事件の生存者らを招き、ロック史に残るであろう公演を行った。

 昨年の事件では、各地で発生した襲撃によって130人が死亡。そのうち、同バンドが公演中だったバタクラン(Bataclan)劇場では、最も多い90人が死亡した。

 バンドメンバーは今回の公演で、再会した喜びと惨劇から生き延びた安堵(あんど)で熱狂するファンの前で演奏。無差別殺りくの夜の記憶とは対極をなす時となった。

 演奏が始まると、割れんばかりの拍手喝采が沸き起こった。この公演は、昨年のテロ事件後、沈んでいたパリ市民が気力を取り戻し、事件を生き延びた人々が厳しい試練を克服するのを後押しする重要な瞬間だとみられている。

 バンドのメンバーらは公演に先立つ15日、事件の被害者約60人と面会した。被害者約500人を束ねている団体「ライフ・フォー・パリ(Life for Paris)」によれば、コンサートに行くかどうかぎりぎりまで決めかねている人は多かったという。

 事件後、数か月にわたり心や体に負った深い傷に悩まされてきた被害者にとって、パリでの再公演は時期尚早だと懸念する心理学者らもいる一方で、公演がカタルシス(感情浄化)になると捉える人々もいる。

 バタクランで銃撃事件に遭遇し、死んだふりをして助かったというアレクシさん(26)にとって、自分がヒーローとあがめるミュージシャンたちを目にすることは、今も引きずっているあのときの恐怖と不安に立ち向かうことだという。「彼らのライブに行こうかどうか今日は何時間も悩みっぱなしだ」と、アレクシさんは語った。(c)AFP/Fiachra GIBBONS