【2月16日 AFP】オランダの研究者らが、血液バンク、精子バンクに続いて同国初の「糞便(ふんべん)バンク」を開設した。慢性腸内感染症の患者の治療を目的とした最先端医学の一分野だという。

 このほど、新たに立ち上げられたのは「オランダ・ドナー糞便バンク(NDFB)」。ライデン大学(Leiden University)のエド・クイパー(Ed Kuijper)教授(細菌学)は、AFPの取材に「移植のための糞便(中)物質を医師や病院に提供する一助となる」と語った。同施設は、こうした移植に役立てるために必要な糞便の収集、保管、配布を行う。

 クイパー教授によると、糞便移植療法は、慢性の腸内感染症、特にクロストリジウム・ディフィシレ菌(Clostridium DifficileCD)に苦しめられている患者の唯一の解決策である場合が多い。特に、長期にわたって抗生物質を多用する治療を受けた後の患者の体内で増殖するケースが顕著なのだという。

「ある種の抗生物質が腸内の細菌叢(さいきんそう、マイクロバイオーム)を破壊するため、細菌が増殖して拡散することが可能になる」とクイパー教授は説明。そして「糞便移植により、体に良い細菌を体内に戻すことができる。この細菌が移植後に腸内で拡散することで、健全な細菌叢が腸内に再生される」と続けた。

 オランダでは毎年約3000人がCD感染と診断されており、感染例の約5%で慢性化するとされる。同国では毎月約3~4件の糞便移植が実施されている。

 症例によっては、CD感染が重度の下痢や、大腸や腸せん孔の重い炎症を引き起こし、命にかかわる恐れもある。

 糞便のドナーについてクイパー教授は、「健康で、太り過ぎでもやせ過ぎでもなく、優れた腸内細菌叢の持ち主でなければならない」と語った。

 昨年世界初の糞便バンクを2か所開設した米国とは異なり、ドナーに報酬は支払われない。糞便はそれぞれの自宅で収集され、ドナーは匿名性が保たれる。

 提供された糞便は、オランダ西部の都市ライデン(Leiden)にある糞便バンクに運ばれ、移植に適した製品へと加工される。移植には内視鏡が用いられる。

「糞便バンク」については、他の疾患に関する研究の一助となることが期待されているほか、消耗性疾患のクローン病など、その他の病気に適用される可能性もあるという。

 ただ、「献便」が献血と同程度に受け入れられているわけではないことをクイパー教授は認めている。「だがそれは、人々の慣れの問題であり、ドナーは難病に苦しむ患者に安全な治療の可能性を提供していると考えている」

(c)AFP