ブラジルで中絶論争再燃、ジカ熱への恐怖広がる
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【2月5日 AFP】小頭症の子供を産む危険を犯すのは、果たして正しいことなのか―。ジカ熱の感染が拡大しているブラジルで、妊娠中絶をめぐる議論が再燃している。
カトリック教徒が世界で最も多いブラジルでは、一部の例外を除いて中絶は違法だ。中絶が認められていたのは2012年までで、性的暴行を受けた場合と、母体の生命が危険な場合に限られていた。
だが、頭部と脳が異常に小さい状態で生まれる「小頭症」との関連が疑われるジカウイルスへの恐怖が、こうした状況を変える導火線になるかもしれない。
ブラジルで昨年10月以降に小頭症と確認された新生児は404人に上り、2014年の147件から激増。このほか、疑いがもたれる症例が3670件ある。こうした小頭症急増の原因が、蚊が媒介するジカウイルスである可能性が高いとして、世界保健機関(WHO)は国際的な緊急事態を宣言した。
中絶賛成派の活動家や弁護士、医師らのグループは、小頭症の場合や妊婦がジカ熱に感染した場合にも中絶を認めるよう最高裁に求める署名活動に着手。このグループは2012年に無脳症胎児の中絶を認めるよう訴えを起こし、勝利した実績がある。
同グループは、蚊が媒介するジカウイルスの潜伏期間が7日以内と短く、全く症状が出ない感染者も多いことから、妊婦がジカ熱に感染しても知らずにいる可能性が高いと主張。さらに、胎児が小頭症かどうかは、妊娠24週以降にならないと検知できないことなどから、妊娠初期の予防的中絶を許可する必要があるのだという。
中部ゴイアニア(Goiania)市のジェシール・コエリョ(Jesseir Coelho)判事は、胎児が生きて産まれない場合の中絶許可に限り、法律を緩和できると見方を示し、「最高裁判所が、無脳症で生まれる胎児の中絶を許すのだとすれば、小頭症の場合に中絶が許可され得るのは、胎児が死産となることが明白な場合だと理解している」 と述べた。
一方、中絶に反対するグループは、こうした選択を試みることは、医師に神の役割を演じさせることにつながると主張している。
ブラジルデング熱学会(Brazilian Dengue Society)会長のアルトゥル・ティメルマン(Artur Timerman)医師はAFPの取材に対し、ジカ熱に感染した女性の中には(法律の変更を)待ちきれず、非合法に中絶する人もいると話した。ブラジルでは毎年、約100万件の中絶手術が非公式に行われているとみられている。 (c)AFP/Eugenia LOGIURATTO