【1月15日 AFP】暴力がはびこるメキシコ北東部マタモロス(Matamoros)で、20台の車が前後をパトカーに挟まれ、一列に並んで待機していた。一行がこれから向かうのは、「死のハイウエー」の悪名で恐れられる高速道路101号線(Route 101)だ。ギャングが横行し殺人事件や誘拐事件が後を絶たないこのルートを、警察の護衛の下、猛スピードで走り抜けるのだ。

 車に乗っているのは、多くが米国からクリスマス休暇のためたくさんのプレゼントを携えて帰国してきたメキシコ系移民たち。また、高速101号線の危険をよく知る地元住民も車列に加わっている。

 メキシコでは現在、全土で2万6000人が行方不明となっているが、ここタマウリパス(Tamaulipas)州の行方不明者数は5000人で、国内のどの州より多い。州内では麻薬組織「湾岸カルテル(Gulf Cartel)」と、同カルテルから独立した麻薬密輸組織「セタス(Zetas)」がしのぎを削っており、抗争事件が頻発している。

 閑散とした高速101号線沿いには、閉鎖され放置状態のレストランや事務所などが立ち並ぶ。治安のあまりの悪さに、いつしか「死のハイウエー」と呼ばれるようになったこのルートで、メキシコ連邦警察は2013年から一般市民の車を護衛する作戦を展開している。

 この日警察が先導した車のうち、米テキサス(Texas)州から来たという男性は、タマウリパス州を通行中に銃を突きつけられた経験が3度もある。「大きな銃を持っていた。乗っていたSUV(スポーツ用多目的車)から私を降ろし、車をよこせと言った。車内には家族がいた。私は『勘弁してくれ、金なら払う』と頼み込んだ」

 その連中が麻薬組織の一味だったのか、単なるごろつきだったのかは分からないが、男性によれば車が通りかかるたびに30~70ドル(約3500~8200円)を脅し取っていたという。

 今回、男性は車に玩具やバッグをはじめ米国製品が入った箱をたくさん積んでいた。先頭を走るパトカーのすぐ後ろにつけていたが、それでも緊張していた。「銃撃戦になれば、目の前のパトカーだってほぼ無力だろう。相手はSUVを10台連ねて強盗目的でやって来るんだから」