【1月5日 AFP】今年行われる米大統領選挙で共和党指名獲得争いの首位に立つドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が、4日に公開した初のテレビ向け選挙CMで、モロッコからスペインの海外領土に流れ込む移民の映像を使用し、新たな物議を醸している。

 30秒間のCMは、アイオワ(Iowa)州とニューハンプシャー(New Hampshire)州で5日から放送される予定。放送にかかる費用は1週間で200万ドル(約2億4000万円)という。アイオワ州では、党指名候補を決める党員集会の投票が来月1日、全米に先駆けて行われる。

 CMでは、イスラム教徒の米国入国の一時的禁止、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の壊滅、メキシコからの不法移民の流入阻止といったトランプ氏の公約をアピール。数十人の移民らが国境を越えて流入する映像に合わせ、「彼(トランプ氏)は南部の国境に壁を建設し、不法移民の入国を阻止する。壁の建設費用はメキシコが支払う」というナレーションが流れる。

 このCMに対して、政治家らの発言の正確性を評価するウェブサイト「ポリティファクト(PolitiFact)」は、最もばかげた虚偽情報に与える「火のついたズボン(Pants on Fire)」の評価をつけた。理由として、映像が撮影されたのは米国とメキシコの国境ではなく、大西洋(Atlantic Ocean)の向こう側のモロッコ沿岸にあるスペインの海外領土メリリャ(Melilla)だったことを挙げた。映像は、イタリアのレプブリカテレビ(RepubblicaTV)が2014年5月に放送したスペイン内務省提供の動画だったことが判明したという。

 一方のトランプ氏側は、映像は「開かれた国境がもたらす深刻な影響を示すために選ばれた意図的なもの」だったと説明。メキシコ国境に壁をつくらなければ米国に「非常に現実的な脅威」がもたらされると主張している。(c)AFP