【1月4日 AFP】中国・香港(Hong Kong)で、小規模ながらも客足の絶えない点心レストランを営むチュウイ・ホイ(Chui Hoi)さん(85)は、真夜中から一口大の点心の仕込みに精を出す日々をこれまで60年間続けてきた。

 香港島西部の堅尼地域(ケネディタウン、Kennedy Town)にあるチュウイさんの店「スゥン・ヒン(Sun Hing)」は年中無休で、毎日午前3時に開店する。店内に用意された60席は、常連の学生やお年寄りでいつもいっぱいだ。

 チュウイさんのこだわりは、点心を一つ一つ手作りすること。肉や海鮮、甘い具を皮で包み、何層にも積んだ竹籠に入れて蒸し上げていく。作りたての点心、それこそが成功の鍵だと、チュウイさんはいう。

 しかし業界の中には、伝統的な点心作りの技が廃れつつあると危惧する人も多い。最近の点心レストランでは、需要に応えつつコストを削減しようと、工場で大量生産したものを選ぶようになっているからだ。チュウイさんは「手作りのものは、蒸し上げた後の美しさが違う」という。

 厳しい労働が伴う点心作りに若い料理人たちがどんどん興味を示さなくなっていると、チュウイさんは嘆く。香港では朝食に点心を食べる人が多いため、夜中から仕込み始めなければ間に合わない。「点心作りは早起きで長時間働きづくめ。自由がないと思う若い人が多い」という。

 港に面した役場内にある「美心皇宮(マキシムズ・パレス、Maxim's Palace)」は、にぎやかな店内にシャンデリアがきらめく点心レストラン。地元住民にも観光客にも人気がある。しかし、同店の鄧亮洪(Tang Leung-hung)シェフも、点心を手作りできる若い調理師が不足していると嘆く。今風だとか勤務時間がましだという理由で「中華料理店よりも、ホテルの西洋料理店やすし店の就職を希望する若者が増えている」という。