メキシコのおばあちゃんが作る「大麻薬」
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【1月3日 AFP】メキシコ人のある女性(53)は脚が痛むとき、大麻を浸したアルコールでさする──。彼女はその自家製の薬が、大麻を違法とする同国の法律に触れていることを知っている。だがその調合薬は世代を越えて受け継がれたもので、この女性も子供の頃から使ってきた。
「これは本当に頼りにできる」と、主婦でアマチュアダンサーの女性は絶対に匿名にすることを条件にAFPに語った。「すごく疲れたときに脚や体にのばして塗ると、とてもいい。私は塩がなくても生きていけるけど、大麻入りのアルコールなしでは生きていけない。私の祖母もこれを使っていたの」と、葉と液体が入ったプラスチックのボトルを握りながら言った。
女性はその薬を自分の3人の子どもと3人の孫たちにも使ってきた。子供が熱を出したときには、コットンにその液体を染み込ませたものを、へそに置いた。うっ血の症状には、胸や背中にこのアルコールを擦り込む。
嗜好(しこう)用あるいは医療目的での大麻使用の合法化をめぐる議論は、メキシコではまだ始まったばかりだが、メキシコの人々はすでに何世紀にもわたり、医療目的で大麻を使用してきた。2015年11月に最高裁が、個人で使用するための大麻の栽培と吸引を4人に認める判決を下した。これにより同様の許可を求める道が他の人たちにも開かれ、全国的な議論が盛り上がった。
大麻成分を浸出させたオイルは何か月間も保存でき、容器に入れて隠し持っている人は多い。乾燥させたものや、ペースト状になっている場合もある。頭痛や不眠を和らげるために大麻の茶を飲む人もいれば、吐き気やがんによる痛みを和らげるために吸引する人もいる。
首都メキシコ市(Mexico City)でPRの仕事をしている男性(33)は、温室の強烈な照明の下で水耕栽培されている約20株の大麻草を見せてくれた。「これは個人的に医療目的で使うものだ」と、彼は大麻を吸いながら言った。「売買はしない。私たちは制度や(麻薬密売組織との)戦争の状況を変えるためにやっている」と彼は話す。合法化すれば違法薬物の取引に絡んだ暴力を減らすことができるという、大麻合法化を求める活動家たちの主張と同じだ。
■「自家製の薬」で逮捕された人はいない
エンリケ・ペニャニエト(Enrique Pena Nieto)大統領は合法化に反対しているが、最高裁の判決を受けて、16年1月から3月に専門家を招集して政府としての対応を検討する予定だ。
しかし、医薬品の輸入を担当する連邦衛生リスク対策委員会(COFEPRIS)のミケル・アリオラ(Mikel Arriola)委員長は、医療用大麻の効果に疑問を呈している。「治療目的ならば、錠剤や注射薬といった医薬品の形態で提供されなければならない。大麻はそのプロセスを経ておらず、治療効果は確認されていない」と述べた。
司法長官の広報担当によれば、大麻成分を浸出させたアルコールの所持は違法だという。だが、家で作ったその薬を使用したことを理由に逮捕された人は一人もいないと付け加えた。 (c)AFP/Sofia MISELEM