原始人類、最終氷期末まで存在か 大腿骨化石を分析
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【12月18日 AFP】20年以上前に中国の洞窟で見つかった大腿(だいたい)骨の化石の謎を解く数年に及ぶ調査から、これまで考えられていたより、はるかに遅い時代まで原始人類が存在していたことを示唆する研究結果が17日、発表された。
約1万4000年前のものとされる大腿骨の一部の化石は1989年に中国・雲南(Yunnan)省の馬鹿洞(Maludong、Red Deer Cave)で発見されたもので、「赤鹿人」などと呼ばれている。同地では当初、この骨とともに一群の化石が見つかったが、2012年まで分析はされてこなかった。
大腿骨は比較的小さく骨幹部が細い。150万~280万年前に存在したホモ・ハビリスのものと非常によく似ている。骨の主は体重が約50キロほどと思われ、有史以前と氷河時代の人類の基準からすると極めて小柄だ。
米オンライン科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に掲載された研究論文によると、この大腿骨は年代的には比較的新しいが、150万年以上前に存在したホモ・ハビリス(Homo habilis)やホモ・エレクトス(Homo erectus)などのはるかに古いヒト属の骨と特徴が似ているという。
論文の共同執筆者、雲南省文物考古研究院(Yunnan Institute of Cultural Relics and Archaeology)の吉学平(Ji Xueping)教授は「この骨は年代が新しいことから、人類進化の最後のほうの時代まで原始的な外見のヒト属が存在していた可能性を示唆している。だが骨は1つしかなく、慎重な判断が必要だ」と指摘した。
■原始人類と現生人類が共存か
これまで科学者らの間では、現在の欧州とアジアにあたる地域に有史以前に存在した原始人類はネアンデルタール人とデニソワ人だけで、どちらも約4万年前に絶滅したと考えられていた。
ネアンデルタール人とデニソワ人は、それらの地域に現生人類が進出して間もなく姿を消したとみられている。しかし、今回行われた新たな骨の分析結果は別の原始人類の存在を示唆していた。この原始人類はネアンデルタール人とデニソワ人よりもかなり長い間生き延び、最終氷期の終わり頃まで存在していた可能性があるという。
論文共同執筆者の豪ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)のダレン・カーノー(Darren Curnoe)氏は「今回の新発見は、東アジアの大陸で原始人類の1種が現生人類と同時期に存在していた可能性を示唆するものだ」と意義を語ったうえで、「さらに多くの骨を発見して、事例をじっくり積み重ねていく必要がある」と述べた。
また、吉教授は「チベット高原(Tibetan Plateau)の隆起によって生じた中国南西部特有の環境と気候が、人類の多様性に貢献する保護区を形成していたのだろう。それによって、原始人類の集団がかなり後の時代まで生き延びられたのかもしれない」と語った。(c)AFP/Kerry SHERIDAN