【12月15日 AFP】（更新）ロシアのウラジーミル・プーチン（Vladimir Putin）大統領は奇妙な「早撃ち名人型歩行」をしていると結論づけた珍しい研究結果が14日、発表された。右腕をほとんど振らない歩き方で、旧ソ連の国家保安委員会（KGB）在籍時の武器訓練で身につけた可能性があるという。

　研究結果はポルトガルとイタリア、オランダの神経科医のチームがまとめたもので、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル（BMJ）に論文が発表された。

　健康障害の前兆となることがある人の姿勢や動きの専門家である研究メンバーらは、プーチン氏の特徴的な歩き方に、強い印象を受けたという。

　プーチン氏が歩いている映像を見ると、左腕は普通に振っているが、右腕はほとんど動かしていないことが分かる。こうした非対称な体の動きはパーキンソン病の兆候であることが多いが、プーチン氏にほかの症状は見られなかったことから、この可能性は排除された。

　そこで研究チームは、KGBが使用した訓練用マニュアルを参照し、興味深い別の仮説を立てた。チームがオランダ語に翻訳したマニュアルでは、情報員らに対して、右手に持った武器を胸の近くに引き寄せたまま、体の一方の側（通常は左）を「進行方向にいくらか向けた状態で」前進せよ、という指示がある。これは、敵に遭遇した際にできるだけ素早く銃を抜けるようにするためだ。

■メドベージェフ首相も「ボスをまねて」同じ歩き方に？

　チームはさらに、他のロシア政府高官らの映像も調査し、ドミトリー・メドベージェフ（Dmitry Medvedev）首相やアナトーリー・セルジュコフ（Anatoly Serdyukov）前国防相、セルゲイ・イワノフ（Sergei Ivanov）元国防相、そして軍司令官1人の歩き方にも同じ特徴があることを発見した。

　プーチン氏とイワノフ氏はいずれもKGB出身で、残る2人は軍事訓練を受けた経験があると、研究は指摘。一方で、メドベージェフ氏は軍やKGBとの明確なつながりはない。

　では、メドベージェフ氏はなぜプーチン氏のように歩くのか。研究チームは考えられる理由として、上司である大統領の歩き方をまねていることを示す証拠があるとしている。

　論文では「武器の訓練に伴い腕の振り方が抑制される例は他にもある。西部劇の映画に登場するカウボーイたちも、右腕の振り方を抑えている」と指摘。そのため「この新たな歩き方の表現型を『早撃ち名人型歩行』と命名することにした」と説明している。

　研究を率いたオランダ・ナイメーヘン（Nijmegen）のラドバウド大学（Radboud University）医療センターのバスティアーン・ブルーム（Bastiaan Bloem）教授は、プーチン氏の場合、腕の振りの抑制は「過剰に会得された」結果である可能性もあると指摘。「まるで、『ほら、私はKGBの訓練を受けた本物の男だ』と言っているかのようだ」と述べている。(c)AFP