【12月5日 AFP】子どものおもちゃ、細断された書類、イスラム教の聖典コーラン(Koran)、コンピューター機器――米カリフォルニア(California)州で14人が殺害された銃乱射事件で射殺された容疑者夫婦の自宅が4日、メディアに公開された。2人の生活を垣間見る機会が与えられたが、今回のようなメディア公開は異例で、議論を呼んでいる。

 米国籍のサイード・ファルーク(Syed Farook)容疑者とパキスタン人の妻のタシュフィーン・マリク(Tashfeen Malik)容疑者が、カリフォルニア州サンバーナーディーノ(San Bernardino)の福祉施設のパーティーで14人を射殺してから2日後。メディア関係者は、ファルーク容疑者の家主によって、2人が生後6か月の娘と暮らしていた2階建ての住宅を取材する許可を与えられた。

 数十人のジャーナリストがレッドランズ(Redlands)にある容疑者宅に押し寄せ、容疑者夫婦を無差別殺りくに駆り立てた手掛かりをつかもうと、子どものおもちゃや家族写真をあさる様子はある意味、現実離れした光景だった。

 今回の乱射事件を「テロ行為」として捜査を進めている米連邦捜査局(FBI)は、物件は家主に戻されており、もはや規制されてはないと述べているが、専門家らは、メディアが現場を乱してもよいという許可が下りたことに驚きの声を上げている。

 立ち入りを許された一人、AFPカメラマンのロビン・ベック(Robyn Beck)氏は、「皆、ありとあらゆるものに触り、アルバムから写真をはがしたり、その写真を撮影したりしている記者もいた」と、建物内は大混乱だったと話した。また運転免許証やソーシャルセキュリティーカードを映すテレビ局のスタッフもいたという。

 建物内には他にも、イスラム教の礼拝用の敷物やコーラン、イスラム教のしきたりに関する子ども向けの手引書があった。

 一方で米CNNテレビなどの一部テレビ局は、IDカードなど、身元が特定できるようなものや、慎重な扱いが求められるとみなされるものは、クローズアップで放送しないことにしたと話した。

 CNNは「私たちは、検討せずに放送すべきではなかった写真やIDカードなどを一瞬放送してしまったことを後悔している」と述べている。

 CNNの法務アナリスト、ポール・キャラン(Paul Callan)氏も、メディアが殺到した事態に衝撃を受けていた。

「前代未聞だ。捜査当局の驚くべき怠慢と無謀さを示していると思う。今や犯罪現場は汚染されてしまった」とキャラン氏は述べた。(c)AFP