【11月23日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に共鳴して今年4月、米カンザス(Kansas)州の米軍基地で自爆攻撃を計画したとして、米国人ジョン・ブッカー(John Booker)容疑者(20)が逮捕された。

 この逮捕はおとり捜査によるもので、FBIの覆面捜査官が半年間にわたってブッカー容疑者を巧みに操っていたことが判明した。捜査官の行ったことの中には、「殉教」に関する動画製作を手伝ったり、爆弾製造のための材料リストを提供したり、さらに実際には不活性ではあったが爆発装置を作ったりといったことまで含まれた。

 米国領内でテロ行為への勧誘を行う人物を摘発するFBIのおとり捜査官は増えているが、時に感化されやすい若者に過剰に働き掛け、そうした若者たちが自分だけでは考えつかなかったような行動を計画させ、実行に移させる例があるとの批判が上がっている。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は、FBIは「法律を順守する国民の中からテロリストを生み出している恐れがある」と警告している。

 FBIは少なくとも1万5000人の覆面の情報提供者を雇用している。彼らは小児性愛者から麻薬、テロに至るまで幅広い捜査で活動しており、高い報酬を受け取ったり、刑事免責を受けたりしていることも多い。こうした情報提供者は、おとり捜査の対象者を信じさせるため、自ら計画を持ちかけたり、武器を提供したりといったことまで行うこともある。

 覆面捜査官が今、重点を置いているのは、シリアとイラクにまたがる地域を支配するISに共鳴する人物の特定だ。FBIのジェームズ・コメイ(James Comey)長官によれば今夏、FBIの対テロ捜査官は米国内で「何十人もの」過激派と疑われる人物を監視し、このうち「多く」の者の行動を阻止したという。

 しかし一部の捜査で覆面捜査官がわなを仕掛け、疑わしい人物に行動を促す手法を取っているようにみられることが問題視されている。

 今年のサンダンス映画祭(Sundance Film Festival)で審査員特別賞を受賞したドキュメンタリー、『(T)ERROR』はFBIのおとり捜査がテーマで、対テロ潜入捜査の舞台裏を2年間にわたって記録した前例のない映画だ。