【11月20日 AFP】フランスの首都パリ(Paris)で13日に起きた同時テロ事件で、イスラム過激派の男たちが数時間のうちに89人を無差別に殺害したコンサートホール「バタクラン(Bataclan)」に最初に駆け付けた警察特殊部隊の一人が18日、現場はまるでダンテ(Dante)が「神曲」で描いた地獄のようだったと語った。

 事件の夜、銃の乱射や自爆を行った襲撃犯たちは3つのグループに分かれ、国立スタジアムやコンサートホール、カフェ、レストランを襲撃した。このうち、バタクランのホールでは米ロックバンド「イーグルス・オブ・デス・メタル(Eagles of Death Metal)」のライブが行われていた。

 AFPの取材に匿名で応じたこの隊員によると、警察の精鋭部隊「BRI(捜査介入部隊)」の先発隊が現場に到着するまでには、35分かかった。「最初の通報が入ったのは、午後9時40分。スタッド・ド・フランス(Stade de France)での爆発と、パリ中心部での発砲に関する通報だった」

 午後10時にBRIの先発隊が、パリ中心部の河畔にある本部を「軽武装で」出発。その15分後、パリ東部に位置するバタクランの玄関ホールに足を踏み入れた。

 ホールには、運転手と共に駆け付けたBRIの警視によって射殺された1人の襲撃犯が横たわっていたが、辺りは静まり返っていた。「我々が到着した時、銃声は一つも聞こえなかった。テロリストたちは裏口から逃走したのではないかと思った」

 BRIの警察医、ドニ・サフラン(Denis Safran)医師は「通路とロビーに複数の遺体があった。メーンホールの中へ進むと、何百人もが積み重なって、助けを求めていた。死者と負傷者が交ざっていた」とAFPに語った。

 BRI隊員は「あんな光景は目にしたことがない。死体の海、まるでダンテの地獄編だった。至るところに血が広がり、遺体の上を歩くしかなかった。血の海に足をとられた」