【11月14日 AFP】フランスの首都パリ(Paris)で13日夜に起きた、複数の場所を標的とする銃撃と自爆攻撃による同時襲撃事件は、同国の対テロ当局がここ数か月描いていた悪夢のシナリオが現実になった形だ。

 治安当局や専門家は前例のない襲撃事件が近い将来起こること、またそれを防ぎようがないことを予測していた。仏情報機関、対外治安総局(DGSE)の元職員、イブ・トロティニョン(Yves Trotignon)氏は最近AFPに対し「死ぬ覚悟のある者たちが、標的についてよく学び、強固な実行基盤を持てばたいへん多くのダメージを与えることができる」と語っていた。同氏は「イスラム過激派の下から日に日に経験を積んだ戦闘員が巣立っている。(治安)当局は圧倒されていると言わざるを得ない」という。

 パリの6か所の娯楽施設などが襲われた13日の襲撃では、銃撃犯と自爆攻撃犯合わせて計8人が120人以上を殺害し、200人超を負傷させた。まさに当局が恐れていた同時多発攻撃だ。2004年にスペインの首都で起きたマドリード(Madrid)列車爆破テロ事件以来、欧州で最大の犠牲者が出た。

 トロティニョン氏は「紛争地、おそらくシリアやリビア、イエメンなどで強硬化して帰還した若い男性たちのグループが、ここ(フランス)で武器を入手し行動に出るリスクが最も高い」と述べる。

 パリで今年1月に、イスラム教風刺で知られていた仏風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)編集部やユダヤ人向けの雑貨店が攻撃され17人が死亡した連続襲撃事件以来、当局の対テロ機関、情報機関、警察、救急サービスなどは同様の多発攻撃に備えて訓練を行ってきた。しかし、常に想定外の事態があることは専門家も認めている。

 またメディアの報道合戦も問題を複雑にしている。匿名で取材に応じた対テロ機関のある幹部によれば、最近の襲撃者たちは最大限の注目を集めることを念頭に動いているという。(c)AFP/Michel MOUTOT