【11月13日 AFP】第2次世界大戦(World War II)中、ナチス・ドイツ(Nazi)占領下のオランダで強制収容所に送られたレジスタンス闘士が妻子に別れを告げた手紙が、70年の歳月を経て家族のもとに届けられた。ナチスやホロコーストに関する資料収集などを行うインターナショナル・トレーシング・サービス(ITS)が12日、公表した。

 ナチスに抵抗するレジスタンス運動に参加していたペーター・ウィル(Peter Will)さんは、1943年12月にナイメーヘン(Nijmegen)でナチスに捕らえられ、強制収容所送りとなった。ウィルさんはその2年後、終戦間際に亡くなったが、収容所に送られる直前に妻と6人の息子たちに別れの手紙を書き残していた。

 だが、1944年に書かれた手紙は、今年になるまで家族の手にわたることはなかった。

 手紙は、ウィルさんの遺族の知人がITSウェブサイトでナチス被害者の遺品を検索していた際に、ウィルさんの財布を発見したことがきっかけで見つかった。遺族に返還されたこの財布の中に、ウィルさんの手紙と写真が入っていたのだ。

 財布はもともと別人の名前で誤登録されていたもので、ウィルさんの遺族は1949年に結婚指輪と万年筆を遺品として返還された後、これ以上ウィルさんの私物が見つかることはないと思っていたという。

 ウィルさんがナチスに捕まった時まだ10歳だった息子のヨープ(Joop Will)さんは、父親の手紙を手にして「心から感動している。これ以上、素晴らしいことは考えられない」「わたしたちにとって、父の物語に終わりはない。(父のことは)いつだって心の中にある」と語った。

 ウィルさんの遺族がこれまで調べたところによると、当時食肉検査官をしていたウィルさんは、撃墜された同盟軍パイロットの逃亡を手助けし、廃屋や食肉処理場にかくまうなどしていたという。ヨープさんの兄たちは、父親がたびたびベランダから双眼鏡で空爆の様子を眺め、その後ふと姿を消していたことを覚えているという。(c)AFP