【11月11日 AFP】ロシア陸上競技界のドーピングと腐敗の実態を告発する報告書が出された問題で、露政府治安機関のスポーツ界への関与がはからずも浮き彫りになった。

 世界反ドーピング機関(WADA)の独立委員会による335ページの報告書は、ロシア連邦保安局(FSB)が、ドーピング検査機関の活動を監視し、その職員を尋問していたことを明らかにした。

 同報告書によると、2014年2月のソチ冬季五輪開催期間中も含め、FSB当局者らは検査機関の職員に「脅すような雰囲気を押し付けてきた」としている。

 職員らは独立委員会に「検査機関には、技術スタッフのふりをしていたが実際にはFSBから来た人間がいた」と証言した。

 報告書によると、モスクワ(Moscow)のドーピング検査機関の所長は、「WADAの雰囲気」についてFSB要員に報告するよう求められたという。

 旧ソ連の国家保安委員会(KGB)の後継機関でテロ行為と国家反逆の防止を任務とするFSBが、なぜスポーツ選手の尿に関心を持つのか、部外者が理解するのは難しいかもしれない。

 しかし、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)露大統領が大統領就任前に短期間トップの座にいたその影の組織はかなり以前からスポーツ界とつながっていた。スポーツ分野の国際的成功が冷戦(Cold War)の最前線だった頃にまでさかのぼるソ連の伝統の一部だ。

 各国の治安・情報機関の動きを監視している露ウェブサイト「Agentura.ru」の創設者、アンドレイ・ソルダトフ(Andrei Soldatov)氏は「KGB、FSBと人気スポーツの関係には歴史がある」と述べ、旧東ドイツの秘密警察シュタージ(Stasi)と同じく、KGBにも「スポーツを管轄する特別部署があった」と指摘した。1980年のモスクワ五輪では、KGB工作員が身分を偽り、清掃作業員としてホテルで働いていた。

 亡命を未然に阻止するだけでなく、成功したスポーツ選手が、選手生活や住宅問題など、あらゆる問題で頼りになるKGB職員に相談できるようになっていた。