【11月8日 AFP】エジプトのシナイ半島(Sinai Peninsula)で発生したロシア旅客機墜落の原因が爆弾である疑いが浮上する中、ロシア連邦航空運輸局は航空機44機を7日にエジプトへ派遣し、紅海(Red Sea)沿岸にある2つのリゾート地に足止めされたロシア人観光客を帰国させると発表した。

 44機のうち30機はエジプトのハルガダ(Hurghada)へ、残り14機はシャルムエルシェイク(Sharm el-Sheikh)に派遣される。ロシア政府は先に、自国民約7万8000人がエジプトで休暇を過ごしていると発表していた。

 ロシア非常事態省によると、航空機には安全上の理由から手荷物以外の持ち込みは許可されず、預かり荷物は同省がロシアまで輸送する。同省は7日、「イリューシン(Ilyushin)76型輸送機2機が今日にも観光客の荷物を運ぶためにエジプトに向けて離陸する予定」と発表した。

 同省はまた、「観光客の帰国は、エジプトでの滞在予定とロシアへの帰国便チケットに記載される日程に合わせて行われる」と付け加えた。

 ロシア旅行業協会の広報担当者は先にAFPに対し、エジプトに滞在する同国観光客が帰国したくない場合は無理に帰国する必要はないと述べていた。

 ロシアの通貨であるルーブル安や原油価格の低下、ウクライナ危機による欧米諸国の経済制裁により、海外旅行をするロシア人はかなり減っている。しかし比較的安価に旅行できるエジプトなどの観光地は今でも、特に学校の長期休暇中の旅行先としてロシア人の間で人気があるという。

 ロシア政府は今回の墜落がシリア空爆の報復のためイスラム過激派が仕掛けた爆弾によるものという説をいったん否定したものの、その後エジプトへの全航空便の運航を停止した。

 しかし、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の報道官は、運航停止は墜落原因が故意の攻撃によるものと断定したため下されたわけではないと主張している。

 政治評論家スタニスラフ・ベルコフスキー(Stanislav Belkovsky)氏はロシアのラジオで、旅客機墜落はロシアによるシリア空爆の直接的な結果としての「テロ攻撃」だったことをプーチン氏は理解しているが、国益の観点からこれを認めることができなかったし、今もできていないと指摘し、おそらくロシア政府は「墜落はテロ攻撃」という見方は事実ではないと見せかけようと考えたのだろうと述べた。(c)AFP