貧困で拡大する腎臓売買、業者になるドナーも バングラデシュ
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【11月7日 AFP】バングラデシュの農村部に暮らすラウシャン・アラ(Rawshan Ara)さん(28)は何年も借金に苦しみ、ついに家族と同じ道を選ぶ決心をした。現金を手に入れるため、片方の腎臓を闇市場で売りに出すのだ。
貧しいこの農村地帯の多くの住民と同様にアラさんも簡単に地元の仲介業者を見つけ、そして違法ながら同国で活況を呈している臓器売買ビジネスの犠牲者になった。
今年2月、1児の母であるアラさんが摘出手術を受けると決めた時、2人の親族──姉と義理の兄弟──が反対した。この2人も2年前に手術を受け、その合併症に苦しんでいたのだ。それでもアラさんが決心を変えなかったのは、「貧しさに疲れ切っていた」から。首都ダッカ(Dhaka)から北西に300キロ離れた、アラさんたちが住むカライ(Kalai)村は、いつからか臓器売買の拠点になっていた。
アラさんは「夫は一年中病気をしている。娘の教育費もかさむようになった。私はダッカに行ってメイドや衣料品産業の労働者として働いたが、賃金は本当にひどかった」と語ったが、仲介業者の名を明かすことは拒否した。
しかし警察は、親族らがアラさんを説き伏せて手術を受けさせたとみている。臓器を提供した人物がその後で自ら仲介業者になり、別のドナー(臓器提供者)の獲得に成功すると仲介料を取っているという。カライではこのような仲介業者のネットワークが拡大しており、アラさんの親族もその一部だというのだ。
地元の警察署長は「こういった業者はまず自分の家族を、それから親族、さらに同郷の村人を狙っていく」と語った。警察署長がAFPに明かしたところによると、「腎臓を売ったカライの人は今年だけで40人」だという。2005年から数えれば、その人数は200人に上る。
これ以外に現在、12人のカライ出身者が行方不明になっている。程近い国境を越えてインドで入院し、臓器の摘出手術を受けている可能性が指摘されている。