国民の幸福度向上も「社会的孤立」が問題化、ブータン
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【11月7日 AFP】ヒマラヤの小国ブータンで生活水準の向上に伴い、国民の幸福度が全般的に上昇する一方で「社会的孤立」が増えていることが、「国民総幸福量」(Gross National Happiness、GNH)に関する2015年の調査により明らかになった。同国のツェリン・トブゲイ(Tshering Tobgay)首相が3日、発表した。
トブゲイ首相は、近代化が進み、かつて緊密な人間関係が営まれていた地方の地域社会がばらばらになるにつれ、一部で取り残されてしまう人々が顕在化してきたと述べた。同首相によると「2010年に実施した前回の調査と比べ、生活水準や健康、時間の使い方といった分野の指数が緩やかに上昇している一方で、地域の活力や心理的な幸福度などの分野では指数が低下傾向にある」という。
ブータンは世界で唯一、国家の繁栄の指標として、国内総生産(GDP)ではなく国民総幸福量という考え方を取り入れている。同国では1960年代まで自動車用の道路や通貨がなく、74年まで外国人観光客を受け入れていなかった。テレビ放送が開始されたのは99年。
7年前にようやく普通選挙が導入され、民主的に選出された政権が誕生して以降、地方部にも電気や道路が整備され、ブータンは急速な発展を遂げている。
■流動化が進む社会
国内各地の7153人を対象に実施された2015年のGNH調査では、心理的な幸福度、健康、教育、地域の活力、生活水準など9つの項目を基に数値を算出。幸福度指数は2010年調査の0.743から0.756に上昇した一方で、社会の流動化が進行。伝統的な社会構造に近代化のひずみが生まれ始めていることが明らかになった。回答者の多くが「調和」を重んじるブータンの伝統的な行動規範が崩れてきていると考えていた。
調査報告書の主執筆者、ダショー・カルマ・ウラ(Dasho Karma Ura)氏はAFPの電話取材に対し、ますます多くの若者が農村部から移住し、高齢者が取り残されていると指摘し、政府は地方での「社会的孤立」の問題に取り組むべきだと述べ「経済的変化の一般的影響が心配だ。多くの人々が地方から離れれば、歴史や文化も取り残されてしまう」と懸念を示した。(c)AFP/Claire COZENS