【10月30日 AFP】労働人口の減少という危機に直面した中国は29日、1970年代から続いた「一人っ子政策」の廃止を発表した。だが、危機打開への効果はないだろうと専門家らはみている。

 実際のところ、中国の夫婦たちが2人目の子どもを持ちたいと考えているかどうかは極めて疑わしい。また、たとえその気になったとしても、生まれた子どもが労働人口の高齢化に歯止めをかけられる年齢に達するのは最短でも15年後だ。

 導入当初こそ厳格だった一人っ子政策は次第に緩和され、中国政府は2013年、夫婦のいずれかが一人っ子の場合は2人目の子を持ってよいと発表していた。「だが、この措置でも夫婦に2人目を持とうと決心させることはできなかった」と、仏投資銀行ナティクシス(Natixis)のパトリック・アルトゥス(Patrick Artus)氏は指摘する。

「理由は、生活様式の変化や都市化、女性の社会進出などに関係している。また、よい学校に進学させようと思えば教育費も非常に高くつく」(アルトゥス氏)

■労働人口危機、大きな「タイムラグ」

 一人っ子政策廃止に先立って発表された国連(UN)の予測によれば、中国では2015年~2030年に15歳~59歳の人口が約9%減少する見通しだ。

「それでも、高齢化する中国の人口バランスが出産制限の緩和によって是正される可能性は低い」と、英イーストアングリア大学(University of East Anglia)ノリッジ医学部(Norwich Medical School)のアナ・スマジダー(Anna Smajdor)氏(医療倫理)は言う。中国でも、特に裕福で高学歴の女性たちにおける出生率は低く、また地方の最貧困地域では既に2人目の子を持つことが認められているからだという。

 スペイン・バルセロナ(Barcelona)近郊を拠点に活動するフリーのエコノミスト、エドワード・ヒュー(Edward Hugh)氏は、長期的に見て経済生産力を向上させる方策は2つあり、労働人口の増加と生産性の向上だと述べた上で「だが、大きなタイムラグがある。何らかの効果が出るまでは、15年以上かかる」と指摘した。生産性の向上も、消費者主導型のサービス業を基盤とする経済へシフトする中国では達成困難だろうとみる。

 英金融大手「HSBC」のエコノミストで、米コロンビア大学(Columbia University)で教壇に立つクリスチャン・デセグリーズ(Christian Deseglise)氏は、中国は経済成長をわずかなり犠牲にしなければ、先進国へと移行することはできないと述べている。(c)AFP/Aurélia END