捕らえられた魚が「救助要請」、別の捕食動物呼ぶ 豪研究
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【10月30日 AFP】捕食動物に捕えられて窮地に陥った魚は「助けを求める信号」を発して他の捕食動物を引き寄せ、それによって生じた混乱の隙に逃げようとするとの研究論文が29日、発表された。
これまでの研究では、傷ついた魚が体表に存在する化学物質を放出し、近くの仲間に危険を知らせる現象については確認されていたが、この「避難信号」が、捕獲された魚自身のためにもなっていることまでは知られていなかった。
英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に掲載された研究論文の共同執筆者で、豪ジェームズクック大学(James Cook University)のマーク・マコーミック(Mark McCormick)氏は、「(危険を知らせる化学物質が放出されて)1分もたたないうちに、小型肉食魚の群れがやって来る」とAFPの取材に述べ、大半の魚が同様の行動を示すことを補足した。
マコーミック氏は、「彼らにとっては、誰かが食事を知らせるチャイムを鳴らしているようなものだ。小型魚を最初に捕獲した肉食魚は、獲物の横取りを狙う他の肉食魚の群れに追い回され、その中で混乱状態に陥る」としながら、「最初に小型魚を捕らえた肉食魚は約40%の確率で獲物を放してしまい、小型魚はその間に泳ぎ去って命拾いすることが分かった」と続けた。
今回の研究は、主に熱帯地方の海に生息する種類の小型魚、スズメダイを対象としたものだが、スジアラやフエダイなど、より大型で商業的に重要な種類の魚も、スズメダイと似た特徴を持っている。
「今回の研究では、この(助けを呼ぶ信号を発する)ことが発達した理由のほか、他の肉食魚を引き寄せることにメリットがあり、危険を知らせる合図信号の伝達機能が、被捕食魚個体群の中で非常に有利に働くとの理由から、それが維持されてきたと推測することもできる」とマコーミック氏は説明する。「そして驚くべきことに、窮地から救いに来てくれるのは、他でもない別の危険な捕食者なのだ」
研究チームによると、次の段階として、魚が出す遭難信号がサンゴ礁の損傷によってどのような影響を受けるかを調べるために、今回の研究を拡張することを予定しているという。マコーミック氏は、ジェームズクック大のサンゴ礁研究センター(Centre of Excellence for Coral Reef Studies)を研究の拠点としている。
マコーミック氏によると、サンゴ礁が損傷を受けている場合、一部の魚では、化学物質の信号が大きく乱されてしまう。そのため、環境の影響により、化学物質の警戒信号が変えられたり消されたりすると、信号は同様に作用しなくなるというのだ。
「これは、捕食者の被捕食者に対する基本的な関わり方が、逆の場合も同様に、変化することを意味する」とマコーミック氏は述べた。(c)AFP