求む!「ハラル」な出会い、イスラム式スピードデート マレーシア
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【11月2日 AFP】頭にかぶったピンク色のスカーフから緊張した表情をのぞかせながら、男性と会話をしているマレーシア人の独身女性、シティ・アイシャさん(29)。初対面の男性だが、このイスラム式スピードデートの後、彼女の夫になる可能性がある。
シティさんの両親が目を光らせる中、2人は数分の間、恥ずかしそうに会話を交わした。やがて交代を告げるベルが鳴ると、数十人の男性参加者たちは別のテーブルへと移動し、他の花嫁候補たちと会話を始める。
マレーシアの首都クアラルンプール(Kuala Lumpur)のレストランで開催されたこのスピードデートは、お目付け役の監視の目が厳しいイスラム式のお見合いで、時間の少ない現代の若者向けに打ち出された新機軸だ。
グラフィックデザイナーのシティさんは、大学を出てから一度も男性と交際したことがない。「今日は結婚相手を見つけるために来た。忙しすぎて出会いがないし、自由な時間は全部、家族と過ごしているから」。休み時間にそう語るシティさんの横で、両親は花婿候補に関するメモを熱心に比較していた。
主催者によれば、2000人以上が今回で2度目となる「ハラル・スピードデート」に参加を申し込んだ。「ハラル」とは、イスラムの戒律にのっとったお見合いであることを示す呼称だ。
たとえ似合いの組み合わせがあったとしても、すぐに結婚へと結びつくわけではない。だが、より深い交際を経て求婚へとつながる場を用意する欧米式のスピードデートと違い、イスラム式では両親も含めて双方が同意すれば、すぐに結婚の運びとなる。
■失われた「美徳」を取り戻す
イスラム教徒が多数を占めるマレーシアでは長い間、穏健な信仰が営まれてきた。しかし最近は保守的な信仰態度が台頭する中、このスピードデートは、マレーシアのムスリムが西洋的な軽薄な出会い方だとみなしている出会い系サイトなどに代わるものとして歓迎されている。
ハラル・スピードデートの共同創業者であるズーリ・ユーハイ(Zuhri Yuhyi)氏は「本当の紳士はまず、女性の父親から了承を得るものだ」という。「それは何千年も前から続いてきた慣習なのに、わずか二、三世代でその美徳が失われてしまった。私たちはそれを取り戻したいと思っている」
スピードデートの間、ムスリムの男女は冗談を言い合っていたが、男性は洋服姿なのに対し、ほとんどの女性はイスラム式の保守的な長袖のブラウスにロングスカート、ヘッドスカーフといった出で立ちだった。名前を呼び合うのはタブーで、参加者たちは服に番号札を付けていた。会話の内容をメモしている参加者は少なかった。
会話が弾んでいても、ズーリ氏が5分おきに交代の合図のベルを慣らし、明るい声で「さあ、みんな、動く時間だ」というと、男性たちはテーブルを移動していく。
■出会い系アプリとは一線画す
イベントの後、主催者は興味を示した男性からの申し出を女性側に知らせる。きょうだいに付き添われてきた若い女性は「これまでは順調よ」と語った。他の多くの参加者同様、この女性は匿名で取材に応じた。「1人か2人、可能性がある人がいたかもしれない。でも今回うまくいかなくても、また新しい人に会えるから」
何人かの女性たちは、従来の結婚相談所やウェブサイト、あるいは偶然の出会いによって良縁を見つけるのは難しいために参加したと語った。ある女性は、「アプリを使ってイスラム教徒の男性と出会おうとしたけど、選択肢は限られていた」と話す。
ズーリ氏は、米国発のアプリ「ティンダー(Tinder)」など欧米の有名な出会い系サイトは「結婚前のセックスや赤ん坊の置き去り、不倫といった社会的な病につながり得る」と警告する。
シティさんの父親のジャマリ・カマルディンさんは、友人にお膳立てしてもらった見合いなども試したが「あまりうまくいかなかった」という。「スピードデートはとても新しく、私たちも初めて利用するが、期待したい。先入観をもたないようにしないと」 と語った。(c)AFP/Satish Cheney