【10月16日 AFP】欧州人権裁判所(European Court of Human RightsECHR)は15日、オスマン帝国時代のトルコで1915年に起きたアルメニア人虐殺を「ジェノサイド(集団虐殺)」ではないと否定した発言が人種差別だとして有罪となったトルコ人政治家について、訴追されたのは誤りだったとする判決を下した。

 トルコ祖国党(Patriotic Party)を率いるドウ・ペリンチェク(Dogu Perincek)書記長は2007年、「アルメニア人ジェノサイドというのは国際社会の大うそだ」と発言したことが人種差別に当たるとして、スイスの裁判所で罰金刑の有罪判決を受けていた。

 しかし、この判決について欧州人権裁判所は、賛成10、反対7で訴追自体が誤りだったと判断。有罪判決と罰金刑はペリンチェク氏の「言論の自由」に対する侵害だったとみなした。

 判決文では、ペリンチェク氏の発言は「公共の利益」の問題に関するものであって「憎悪や不寛容の呼び掛けには相当しない。したがって、刑事罰による対処を要求するほどアルメニア人の尊厳に影響するとはみなせない」と説明している。

 欧州人権裁判所は、ペリンチェク氏の発言と「ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)」の否定とを明確に区別し、ホロコーストの否定は歴史的な背景から常に一部の国で「人種憎悪の扇動とみなされ得る」と述べた。同裁判所は今回の判決に先立ち、「ガス室の存在など」ホロコーストに関する歴史上の事実は「国際司法機関によって明確に実証されたものといえる」との判断を示している。

 1915~17年にオスマン帝国によってアルメニア人が組織的に殺害されたアルメニア人虐殺については、多くの歴史家が支持するジェノサイドだとの定義を世界20か国以上が認めている。だが、トルコは一貫して虐殺を否定し、犠牲者数もアルメニア人側の最大150万人との主張に対し、50万人程度だったと反論している。(c)AFP/Arnaud BOUVIER、Mariam HARUTYUNYAN