1億2500万年前の哺乳類化石に体毛、白癬の痕跡も 研究
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【10月15日 AFP】恐竜の足元を走り回っていたネズミに似た生物は、現代の哺乳類のような体毛を持ち、現在のペットや人を悩ませているのと同様にかゆみを生じる白癬(はくせん)菌に感染していた可能性が高い──このような研究論文が英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。
14日に発表の研究論文によると、スペインのラス・オヤス(Las Hoyas)の採石場で発見された1億2500万年前の化石は、非常に保存状態の良く、これまで確認された中で最古の哺乳類の肝臓と肺、さらには、この種のものとしては最も細部が詳細に分かる体毛と皮膚が残されていたという。
論文共同執筆者の米シカゴ大学(University of Chicago)の研究者、羅哲西(Zhe-Xi Luo)氏は「この毛むくじゃらの生物は、現代の哺乳類の皮膚と体毛の完全な構造的多様性を示している」と話す。
これまでの研究では、1億6500万年前までさかのぼる体毛の証拠が明らかになっていたが、これらは化石化した痕跡にすぎず、新たに発見された化石のような細部は残されていなかった。
同採石場ではこれまでに数百個の化石が発掘されており、その中には科学的に重要な鳥類や恐竜の化石が含まれている。羅氏はAFPの取材に対し、化石が2011年7月に現地を調査していた研究チームの一人によって発見されたと述べた。
この生物の体毛が付いた皮膚と肝臓は裸眼で確認できるが、肺の複雑な構造を見るには顕微鏡が必要だったという。
「とげ」を意味するラテン語に由来する学名「スピノレステス・ゼナルトロスス(Spinolestes xenarthrosus)」と命名されたこの生物は、1つの毛穴から複数の毛が生えていること、背中にハリネズミに似たとげがあることなど、際立って現代的な特徴を持っている。発見された化石について羅氏は、「多くの基本的な哺乳類の特徴が、約1億2500万年前の恐竜時代にすでに確立されていたことの決定的証拠が、今回の研究で得られた」と指摘している。
また興味深いことに、体長24センチ、体重約70グラムのこの生物の背中には、切り株のような太くて短い毛がみられた。研究チームはこれを、皮膚糸状菌感染の証拠と説明している。皮膚糸状菌感染は、接触伝染性のかゆみを生じる皮膚感染症で、白癬として一般に知られている。
化石からはさらに、知られている中で最古の哺乳類の耳や、現代のアルマジロにみられる「鱗甲(りんこう)」と呼ばれる板状構造も見つかっている。
研究チームは、この生物が陸上での生活に適応していたと考えており、また昆虫を主食としていたと推測している。(c)AFP/Joshua MELVIN