【10月14日 AFP】オーストラリア・アデレード(Adelaide)の南東にあるモナート動物園(Monarto Zoo)で、生まれた直後に母親が死んだチンパンジーの赤ちゃんが妊娠中の別の雌に「養子」として引き取られるという「前代未聞」の出来事があり、このチンパンジーの赤ちゃんが14日、一般公開された。

 この赤ちゃんチンパンジーは「恵み」という意味の「ブーン(Boon)」と名付けられた。母親の「スーナ(Soona)」は今月9日にブーンを出産した直後に死んでしまい、ブーンは「孤児」になってしまった。だが、スーナが死ぬ際に寄り添っていた「ゾンビ(Zombi)」という名の雌のチンパンジーが、「たくましく健康」なブーンを引き取るという、心温まる意外な展開が待っていた。

 同動物園で霊長類の飼育を担当するローラ・ハンリー(Laura Hanley)氏は、出産が近づいた妊娠中のチンパンジーが「継母」の役割を引き受けるというケースは、世界中を探しても聞いたことがないと語っている。

 ハンリー氏は一般公開に際して声明を発表。この「奇跡」の赤ちゃんについて「ここ数日の間にチンパンジーたちの群れでみられた出来事に畏敬の念を抱いた。出産が近いチンパンジーが、生まれたばかりのチンパンジーを引き取るという話は聞いたことがない」とするとともに、「赤ちゃんを最初にあやして以降、ゾンビは本当に素晴らしいことに、自分の子どものようにブーンの身繕いをし、世話をし、授乳してあげていた」と述べた。

 ハンリー氏は、ゾンビは今月出産予定だが、出産後もブーンを育てていくだろうという楽観的な見通しを持っていると語った。(c)AFP