【10月12日 AFP】ムアマル・キデルさんは結婚間近だったが、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)での生活がもたらす特殊なプレッシャーの中で、限界点に達した。

 21歳のパレスチナ人の彼は最近、ねずみ用の毒を飲んで自殺を図った。未遂に終わり、治療を受けたキデルさんは「すべてのドアは閉じていた」と語った。果物を売る屋台を営むキデルさんは、警察の取り締まりを何度も受けて閉店に追い込まれ、収入を奪われたと説明した。

 イスラム原理主義組織ハマス(Hamas)が実効支配し、2008年以来イスラエルとの3度の紛争で壊滅的状況にあるガザ地区では、自殺や自殺未遂が増えている。伝統的、宗教的価値観に支配されたガザで自殺はタブー視されているため、公式な統計を得るのは不可能だ。警察は、自殺はまん延していないと主張する。しかし、匿名を条件にAFPに語った治安当局筋によれば、その数は「恐ろしいほど」上昇しており、「ほぼ毎日」のように起きているという。

 毒物を飲み込んで運び込まれて来る患者の数に、医師らも警告を発しているが、毒物を摂取した理由を最終的に判断するのは警察だという。

 海辺で「貧しい人のための」カフェをやっているモハメド・アブ・アシさんも、自殺を図った一人だ。やはり警察に閉店させられ毒を飲んだ後、数日間、意識不明に陥った。「30歳にもなって、子供たちを食べさせるだけの稼ぎすらなかった」という。「子供たちが自分の目の前で死んでいくのを見るくらいなら、自分が死んだほうがましだった」