■遅いペースながら徐々に改善

 一応は民政移管された形の同国政府は、今年11月8日に実施される総選挙でアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)氏率いる最大野党・国民民主連盟(NLD)と対決するに当たり、医療サービスにようやく注意を払うようになった。もし選挙が公正に行われればNLDは躍進するとみられている。

 ヤンゴン総合病院(Yangon General Hospital)救急医療部門のモー・モー・ウー(Maw Maw Oo)准教授はAFPの取材に対し、「われわれは救急車両を複数所有しているとはいえ、装備は万全とはいえない。救急車両を扱う人たちも訓練を受けておらず、単に搬送するだけだ。そもそも(救急医療)システムが存在していない」と語った。

 2012年までミャンマーには「救急医療サービスが存在していなかった」と言うモー・モー・ウー氏は、同病院での救急医療部門の立ち上げや、この分野での新たな学位や専門医のポストの新設について説明し、同国ではさらに今年、救急車両230台が導入されることになっており、まずヤンゴン・マンダレー間のハイウエーで運用を開始した後、首都ネピドー(Naypyidaw)やヤンゴン、マンダレー市内に運用範囲を拡大していく予定だと付け加えた。また、救急通報電話の創設や、同国初となる救急医療隊員の訓練も計画されているという。

 ミャンマーで医療費の患者自己負担が導入され、国より患者の負担額が大きいと物議を醸した制度の下、患者自らが注射針や医薬品を用意して手術に臨んでいたことを考えれば大きな進歩だ。政府からの資金提供が増えた結果、2014年8月から救急医療が無料になり、今では血液検査などいくつかの医療サービスも無料になった。

 それでも、世界保健機関(WHO)の駐ミャンマー代表ホルヘ・ルナ(Jorge Luna)氏によると、患者らは依然として医療費の54%を負担しなければならないという。