「触覚」が感じられる義手を開発、米国防総省
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【9月15日 AFP】10年以上にわたり、まひ状態にある男性が、実験的義手を装着することで「触覚」を取り戻すことができた──米国防総省(US Defense Department)の先進技術研究部門、米国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency、DARPA)の研究チームがこのほど、研究の成果を発表した。
研究チームは、28歳の男性患者の「感覚皮質」に電極を接続して、基本的な触覚を感知できるようにした。感覚皮質は、脳内にある触感を識別する部位。最初の一連の試験では、男性に目隠しをして、義手の指のどれか1本にそっと触れる実験を行った。
実験結果についてDARPAは、男性患者が、触れられた指を100%近くの精度で言い当てることができたと、11日に発表した声明で述べている。
DARPAの「革新的人工装具(Revolutionizing Prosthetics)」プログラムを率いるジャスティン・サンチェス(Justin Sanchez)氏は、実験中のエピソードとして、「ある時、この男性に内緒で、指1本ではなく2本同時に押してみた」ことを明らかにした。そして「男性はおどけた様子で反応し、誰かが彼にいたずらをしようとしていないかと尋ねてきた。患者がロボット義手を通して知覚している感触が、ほぼ自然なものであることが分かったのは、まさにこの時だ」と続けた。
さらに研究チームは、患者の「運動皮質」部位と義手を接続して、義手の動きを思考で制御できるようにした。この機械義手は、米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)応用物理学研究所(Applied Physics Laboratory)が開発した。この種の技術は最近まで、SFの世界だけに登場する、想像上のものだった。
だが、DARPAによると、同局が開発中の神経技術によって可能となる新たな進歩は、「手足が不自由な状態で暮らす人々が、ロボット装具に脳から信号を送ることで物を動かすことができるだけでなく、装具が何に触れているかを正確に感じることができるようになる」ような未来を指し示しているという。
DARPAは、今回の研究に自発的に参加した男性患者の身元を公表していないが、男性が過去に脊髄損傷を受けたことだけは明らかにしている。
「触覚を義手から脳に直接つなぐことで、シームレスなバイオ技術による自然に近い機能の回復を実現できる可能性が、今回の研究では示された」とサンチェス氏は話している。
今回の研究結果は科学誌に投稿済みで、今後査読を経て掲載される予定。(c)AFP