【9月11日 AFP】ハンガリー検察当局は10日、国境を警備する警察から逃げようとしていた移民の足を引っ掛けて転ばせたり、子どもを蹴ったりする様子が映像に収められた女性カメラマンに対し、治安妨害容疑での刑事捜査を開始したと発表した。

 問題の映像には、ハンガリー南東部のセルビア国境に近いロスケ(Roszke)でカメラマンのペトラ・ラースロー(Petra Laszlo)容疑者が、子どもを抱えて走り抜けようとしていた男性にわざと足を引っ掛けたり、走っていた別の子どもを蹴ったりしている様子が収められており、世界中から非難が集中していた。

 ラースロー容疑者は後に、ハンガリーの極右政党ヨッビク(Jobbik)に近いインターネット番組放送局N1TVに所属していたことが判明したが、この映像がきっかけで解雇された。

 ラースロー容疑者は、映像が8日夜にソーシャルメディア上で拡散し始めた直後、ハンガリーの2つの小規模な野党により刑事告発されていた。チョングラード(Csongrad)郡の次席検事は、「捜査の中で当局は、より重い罪が立証されないかどうか見極めていく」と述べた。

 この出来事に関する写真や映像、コメントなどを掲載するためにフェイスブック(Facebook)で立ち上げられた「Wall of Shame(恥の壁)」ページは、10日までに3万人以上の「いいね」を集めている。

 人権団体「ハンガリー・ヘルシンキ委員会( Hungarian Helsinki Committee)」のアニコ・バコニ(Aniko Bakonyi)氏は、問題の映像でラースロー容疑者が「はっきり亡命希望者と分かる子どもも含め、外国人だけを蹴っている」と指摘。「これまでカメラマンとして働いていたのだから、彼女は自分が誰を蹴っているのかをはっきり認識していたはずだ。事故などではなかった。そこは疑いようがない」と語った。

 ラースロー容疑者は本件について、依然として沈黙を守っている。(c)AFP