【9月9日 AFP】国際宇宙ステーション(International Space StationISS)の宇宙飛行士が、将来、別の惑星に人工施設を建設する際の一助となるかもしれない技術の実験に成功した──。地球上にあるロボットの操作を宇宙空間から「触覚」を頼りに行う実験だ。

 デンマークのアンドレアス・モーゲンセン(Andreas Mogensen)飛行士は7日、欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)の緻密な制御の下、極小さな穴にピンを入れる実験に臨んだ。

 モーゲンセン飛行士が高度約400キロの地球軌道上から操作したのは、繊細で、高精度の作業にも対応できるアーム2本を持つロボットローバー「インタラクト・ケンタウロス(Interact Centaur)」。 ローバーの頭部には、カメラが設置されており、操作する人はここから送られてくる映像を見ながら作業に当たることができる。このローバーの制作費は20万ユーロ(約2700万円)ほどだという。

 しかし、このプロジェクトで最も重要となるのはあくまで「触覚」で、視覚ではない。

 実験では、専用の人工衛星複数で構築されたシステムが同期し、超高速で信号が送信される。その信号を頼りに、モーゲンセン飛行士は、ローバーを思い通りに操作することができた。そして非常にゆっくりとではあるが、アームが持つ金属製のピンを、小さな穴の中に下ろすことに成功した。対象となった穴に設けられた「遊び(余分な隙間)」は1ミリの6分の1未満だったという。

 ISSからジョイスティックを操作したモーゲンセン飛行士には、いわゆる「フォース・フィードバック技術」を通じて情報が伝えられた。ピンの位置が正確でなく、穴以外の場所に接触した際には、その「感覚」をジョイスティックから感じ取ることができた。

 ESAのテレロボティクスおよびハプティクス部門に所属するアンドレ・シーレ(Andre Schiele)氏は、将来火星に人類を送る前に、彼らの帰還に必要なロケットの発射施設を先に建設しておく必要があると述べ、発射台が、このようなローバーによって建設される可能性があることを示唆した。

 回のプロジェクトは、ESAとオランダ・デルフト工科大学(Delft University of Technology)の学生らの共同研究で、約1年半前から行われている。(c)AFP/Jo Biddle