【9月4日 AFP】イスラエル考古学庁(Israel Antiquities AuthorityIAA)は3日、建設現場で出土した後、作業員らが隠蔽(いんぺい)しようとして傷つけた古代ローマ時代のサルコファガス(石棺)を回収したと発表した。

 1800年前のものと推定されているこの石灰岩製のひつぎは先週、沿岸都市アシュケロン(Ashkelon)の新周辺地域での現場作業中に発見された。元IAA考古学者で古代ローマ時代の専門家のガビ・マゾール(Gabi Mazor)氏は、これを「類まれな」石棺と表現した。

 IAAによると、石棺を思いがけず発見した建設業者らは、けん引車を使って自分たちで地中から引き出そうとして傷つけた末、金属板や板材の山の下に石棺を隠したという。

 石棺の発見を報告しなかった上、石棺を破損させた疑いで、警察は業者らを取り調べている。IAAは、関係者を相手取って訴訟を起こす意向を表明した。

 IAA広報担当者によると、建設業者らが石棺の隠蔽を試みた理由については不明という。

■「特筆に値する」装飾

 マゾール氏によると、石棺に施された装飾は特筆に値するものだという。

「側面全面には、非常に印象的で美しい装飾が施されている。イスラエルでは相当数のサルコファガスが発見されているが、装飾が施されているものはほとんどなく、装飾があるものでも通常、花輪や花をあしらった飾りが施されている」程度にすぎないと、マゾール氏は話した。

 石棺のふたには、故人を描いたと思われる、左腕にもたれて横たわる男性の彫像が刻まれている。刺しゅう入りの短いシャツを着た、古代ローマ様式の巻き毛で、あごひげのない姿は、男性が若者だったことを示唆している。

 ひつぎの周囲に刻まれた彫刻は「雄牛の頭部や裸のキューピッド、女性の姿をした怪物メドゥーサの首などで、頭髪のヘビの形跡が残るこの首は、メドゥーサが故人を守るという古代ローマ時代の通説の一端を示すものだ」とマゾール氏は述べた。

 アシュケロンは当時、多神教のローマ人、ユダヤ人、サマリア人で構成された民族混合都市だった。だが、装飾から判断して、石棺がローマ人のものだったことにほぼ疑いの余地はないとマゾール氏は指摘した。

 全長2.5メートル、重さ2トンの石棺が今回の建設現場で発見されたことは、霊廟(れいびょう)や他のひつぎなどもその場所に存在する可能性があることを示唆している。(c)AFP