【9月3日 AFP】米国の主要石炭生産地域にある石炭灰に、高レベルの放射能汚染物質が含まれているとの研究報告が2日、発表された。この未規制廃棄物の危険性に関する懸念を浮上させる結果だという。

 米国化学会(American Chemical SocietyACS)発行の査読学術誌「エンバイロメンタル・サイエンス・アンド・テクノロジー(Environmental Science and Technology、環境科学と技術)」9月2日号に発表された研究論文によると、「石炭灰中の放射能レベルは、通常の土壌中より最大5倍高く、元の石炭自体より最大10倍高かった。これは、燃焼によって放射性物質が凝集するためだ」という。

 現在は規制対象外の石炭灰は、石炭火力発電所の近くのため池や埋め立て地に蓄えられている。石炭火力発電所は、気候変動につながる化石燃料汚染の大半を生じる原因とされている。

 これらのため池からの漏出によって地下水が汚染される可能性がある。また、石炭にセレンやヒ素などの有害物質が含まれることは、専門家らの間で長年知られている。

■監視の対象広げる必要も

 論文共同執筆者の米デューク大学(Duke University)ニコラス環境スクール(Nicholas School of the Environment)のアブネル・ベンゴシュ(Avner Vengosh)教授(地球化学・水質学)は「今回の研究は、ラジウム同位体や鉛210などの放射性元素を今後の調査対象とするべきで、現在の監視活動にそれらの放射性元素を含めるべきとする可能性を提起するものだ」と指摘した。

 ラジウム同位体や鉛210は石炭内で自然発生するが、石炭を燃焼すると「ラジウム同位体は石炭灰残渣(ざんさ)中で濃縮され、鉛210は化学的に揮発性となり、飛灰(ひばい、フライアッシュ)の微粒子に付着する」と論文は説明している。

 論文主執筆者で、ベンゴシュ教授の研究室の博士課程学生のナンシー・ラウアー(Nancy Lauer)氏によると、このようなフライアッシュ微粒子は「ため池や埋め立て地に投棄される石炭灰廃棄物の大部分を構成している」という。

 石炭灰の投棄地では現在のことろ、放射能の監視は行われていない。

 ベンゴシュ教授は「石炭灰のため池や埋め立て地で漏出が起きている地域で、これらの汚染物質が環境に放出される量はどのくらいか、人間の健康にどのように影響している可能性があるかについては、不明だ」と話している。

「今回の研究は、この潜在的リスクを今後において評価するための道を開くものだ」(c)AFP