【9月2日 AFP】2020年東京五輪のエンブレムをデザインした佐野研二郎(Kenjiro Sano)氏が、盗作疑惑による批判やバッシングに耐えきれなくなったため、作品を取り下げたことを明らかにしている。

 佐野氏によると、ネット上での誹謗(ひぼう)中傷やメディア側の間違った報道が続いたため、「これ以上は人間として耐えられない限界状況」に追いやられたと告白した。

 2020年に開催される東京五輪は、メーン会場になる新国立競技場 (New National Stadium Japan)の計画が建設費高騰問題で白紙になり、エンブレム変更でさらなる失態を演じている。

 佐野氏は声明の中で、ほかのデザイナーの作品を模倣して東京五輪のエンブレムを作ったとする疑惑について、改めて否定している。

 そして、盗作疑惑が浮上したことで誹謗中傷のメールが届き、自身の家族や親族の写真もネット上にさらされたと語っている。

 大会エンブレムは7月に公開されて以降、ベルギーに拠点を置くデザイナーのオリビエ・ドビ(Olivier Debie)氏がデザインした劇場ロゴに酷似しているとして物議を醸していた。

 ドビ氏は、国際オリンピック委員会(IOC)を相手取り、エンブレムの使用差し止めを求めて提訴している。

 IOCは申し立ての内容を認めず、先月28日には東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(The Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games)が記者会見を開き、佐野氏のデザインを変更する予定はないとしていた。

 しかし、大会組織委員会は1日、国民からの理解を得られないとして、先日の会見から一転して使用中止を発表した。

 東京五輪のエンブレムは、東京、トゥモロー、チームを意味する「T」の字をベースとし、赤い円が心臓の鼓動を表現したものとなっている。

 これに対して、リエージュ劇場のロゴデザインは、黒地に白で東京五輪のエンブレムに似た形が描かれている。

 佐野氏はドビ氏のデザイン盗用は否定したが、その一方で、同じく盗用が指摘されたサントリー(Suntory)の販促キャンペーン賞品については、ほかのスタッフがデザインを写していたことを認めている。

 大会組織委員会はまた、佐野氏が自身のエンブレムを展示する場所のイメージとしてネット上に投稿されていた東京各所の画像を無断で流用していたことで、国民の信頼が失われたとしている。

 ドビ氏は使用中止が決定されたにもかかわらず、訴訟を継続する意向を明らかにしている。

TBSは2日、使用中止が決まったエンブレムが記された広告備品を東京都庁がすでに発注し、その額は約4600万円になると伝えている。

 そして大会スポンサーの日本航空(Japan Airlines)などは、すでにエンブレムを使用した広告キャンペーンを展開しており、今回の変更はスポンサー企業にも悪影響を及ぼすとみられている。(c)AFP