【9月2日 AFP】少年を押さえつける兵士と、その兵士に襲いかかる少年の家族──この出来事は、イスラエルとパレスチナの認識の違いをめぐる対立での新たな武器と化している映像がなければ、人々に知られることがなかったかもしれない。

 この映像について、パレスチナ人たちは、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)でのイスラエルによる不当な扱いを証明するものだと主張。一方、イスラエル人の多くは、活動家らがメディアを利用して仕掛けたわなに兵士がはめられたと主張している。

 8月28日にナビサレハ(Nabi Saleh)村で起きたこのもみ合いの映像は、ネットに投稿されるとたちまち広まり、激しい論争を巻き起こしている。イスラエルとパレスチナの対立において常にそうであるように、両者に妥協の余地はほとんどない。

 このときのビデオや、AFP特派員などが撮影した写真では、覆面をかぶったイスラエル兵が、腕にギプスをした11歳のパレスチナ人少年を拘束しようと押さえつけ、そこへ少年の家族らが反撃している。イスラエル軍によれば、少年には抗議デモで投石をした疑いがかけられていた。

 映像によると、自動小銃を抱えたイスラエル兵が少年を岩に押さえつけたところに、母親や姉を含む少年の家族や、パレスチナ側の活動家らが駆けつけた。もみ合いが起き、家族らは兵士の覆面をはぎ取るなどして、少年から兵士を引き離そうと必死に抵抗。少年の姉が兵士の手にかみつく場面もあった。最後は、助けを求める兵士の叫び声を聞き付けたイスラエル軍の上官がやって来て、兵士に少年を解放するよう命じた。兵士は見るからにいら立った様子で威嚇用手投げ弾を投げつけ、その場を立ち去っている。

 映像が広まるとパレスチナの新聞各紙はこぞって、犬の顔をした兵士を描いた風刺画などを掲載。一方、イスラエル世論の一部は、少年を解放した判断は弱腰だと批判した。