【8月29日 AFP】パキスタン人のシェファズ・ハムザ（Shefaz Hamza）さん（17）は、今月27日にリビア西部ズワーラ（Zuwarah）港沖で欧州への移住を目指す約400人を乗せて沈没した船の破片に海の中で9時間しがみついていた。沿岸警備隊が到着する前にハムザさんの母親と妹は死亡したという。

 リビア赤新月社（Libyan Red Crescent）の広報担当者モハメド・アルミスラティ（Mohamad al-Misrati）氏によると、この事故で29日までに111人の遺体を収容し、198人が救助されたが、多数のアラブ、アフリカ系の人を含む数十人が今も行方不明になっているという。

 ズワーラ近くの警察署で、ハムザさんは、救助された弟の隣に地面に座っていた。

「僕らが出発したのは午前1時半ごろだった」とハムザさんは言った。「木の船で、350人くらいが乗っていた。その中に僕の父さんと母さん、妹（11）、姉（27）、弟（16）もいた」

「1時間半ぐらいたったころ船が沈み始め、海水が流れ込んできた。気づいたときには、僕らは海の中にいた」。ハムザさんは、片手を額に当て、地面をじっと見つめながら話した。「船はばらばらになり、母さんと僕は1つの木切れをつかんでいた。横に弟と妹がいるのが見えた」

「弟が着ていた救命胴衣を奪い取ろうとした人もいた。自分が着てなかったからだ。でもその人は弟に殴られて、そのままどこかに行ってしまった」とハムザさんは語った。「妹は…背中の上に人が乗って、下に押されていた。最後に妹を見たときは、上に男が乗り、妹は水中に沈んでいた」