【8月27日 AFP】2001年9月11日の米同時多発テロの生存者で、粉じんで全身が覆われた姿の写真が有名となったマーシー・ボーダーズ(Marcy Borders)さんが、胃がんのため死去した。42歳だった。

 ボーダーズさん死去の知らせは、遺族が24日、フェイスブック(Facebook)で最初に公表した。ボーダーズさんはテロ発生当時28歳で、ニューヨーク(New York)の世界貿易センター(World Trade Center)ビルにあった米銀行大手バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)でわずか1か月前に働き始めたばかりだった。

 同センターのツイン・タワーの1つが崩壊した時、ボーダーズさんは近くのビルに避難した。その際に、灰で覆われたボーダーズさんの姿を、同じビルにいたAFPのカメラマン、スタン・ホンダ(Stan Honda)が撮影。この写真により、ボーダーズさんは「ダスト・レディー(粉じんの女性)」と呼ばれるようになった。

 テロの後、ボーダーズさんは10年にわたり、うつ病を患い、アルコールと薬物を乱用する状態に陥ったが、最終的には回復した。バンク・オブ・アメリカでは会社側からの転勤の打診を拒み続け、職を失った。その後は、マンハッタン(Manhattan)から橋を渡ったニュージャージー(New Jersey)州ベイヨン(Bayonne)の自宅アパートに引きこもる生活を送った。

 2002年3月にAFPの取材に応じた際には「今も恐怖の中で生きている。橋やトンネル、(地下鉄の)駅など、標的になる場所に行くことは考えられない」と語っていた。

 ボーダーズさんは2011年にリハビリを開始。国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の指導者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)死亡のニュースによって心の平穏を取り戻し、トラウマから回復することができたと語っていた。

 家族によると、がんとの闘病生活は1年間続いた。がんの診断後のインタビューでは、世界貿易センター崩壊で放出された有害化学物質にさらされたことが、発症につながった可能性が高いと語っていた。(c)AFP/Olivia HAMPTON