【8月26日 AFP】北極圏にあるノルウェー領スバルバル(Svalbard)諸島のスピッツベルゲン(Spitsbergen)島では、北極海(Arctic Ocean)に温暖化が及ぼす影響についての研究が進められている。北極海の温暖化に、藻はどのように反応するのか?フィヨルド地帯の生物たちはどのような影響を受けているのか?その答えを見つけ出すために研究者たちが頼っているのが、冷たい海に潜って標本を収集するダイバーたちだ。

 スピッツベルゲン島ニーオルスン(Ny-Alesund)で研究に従事する、海洋生物学者のコルネリア・ブッフホルツ(Cornelia Buchholz)氏は「彼らがいなければ、研究プロジェクトを成功させることはできない」と話す。

 定住地として世界最北に位置するこの町には、1960年代初めまで炭鉱労働者たちが住んでいた。だが現在では、研究関係者しかいない。

 北極点(North Pole)からわずか1000キロという極限の地にありながら、充実した設備を誇るこの町の研究施設は、気候変動による影響がいっそう明確に現れる北極圏で実施される研究の最前線となっている。

 ニーオルスン周辺の海域ではすでに、これまで生息していなかったタイセイヨウダラ、サバといった魚たちやオキアミ類が、海水温の上昇により姿を現すようになっている。

 フランスとドイツが共同で運営するこの研究所で、1994年からダイバーとして働くマックス・シュバニッツ(Max Schwanitz)さん(52)は「科学者たちは私たちに『買い物リスト』のようなものをくれる」と説明する。「例えば、藻の種類や大きさ、量、どの程度の深さから採取してきて欲しいのかといったことを指示される」

 今年7月末の時点ではフィヨルド一帯の海面水温は3~7度だったが、初夏には水温2度未満の海中に潜ることもあるという。

 シュバニッツさんと一緒にダイビングに臨むのは、ドイツ出身の2人の学生、モーリッツ・ハルバッハ(Mauritz Halbach)さん(24)とアンケ・ベンダー(Anke Bender)さん(29)。この3人がニーオルスン唯一のダイビングチームとしてタッグを組む。

「ここでのダイビングは、極端に低い海水温の危険性は当然、視界が非常に悪かったり、潮の流れが強い場合はダイビングをすること自体がとても危険だ」とハルバッハさんは話す。