【8月25日 Relaxnews】「神々の谷」として知られるインド・クル渓谷(Kullu Valley)には、雄大なハイキング・コースのロタン・パス(Rohtang Pass、標高3978メートル)やインド随一と評されるスキー場があり、夏には美しい景色の中で山歩きや乗馬、パラグライダーを楽しむ多くの行楽客で賑わう。

 しかし、インドの国家グリーン裁判所(National Green TribunalNGT)は、クル渓谷の環境を押し寄せる観光客から保護する目的で先月、ロタン・パス沿いやそれに面するスキー場周辺のすべての商業活動を禁止する判決を下した。この判決に地元企業は観光業が壊滅する恐れがあるとして反発している。

「ロタン・パス周辺の人々の大半は観光業に従事している。人々の生活の方が環境よりも重要ではないか」と、クル・マナリ・ホテル経営者協会(Kullu-Manali Hoteliers Association)のアヌプ・タクール(Anup Thakur)会長は述べる。

 クル渓谷は夏には喫茶や飲食、装身具販売などの屋台が無数に軒を連ね、道を通行できないほどになる。ロタン・パスの麓からマナリまでの約50キロの道のりは通常、2時間で行けるが、シーズン中は7時間かかることもある。ごみや汚染は警告が必要なレベルに達し、斜面は残雪が溶けて黒土がむき出し、氷河は記録的な速さで融解しているという。

「ヒマラヤの自然および開発に関わるゴービンド・バラーブ・パント研究所(Govind Ballabh Pant Institute of Himalayan Environment and Development)」の科学者らは裁判で、自動車の排ガスやその他の汚染が、氷河の融解など環境に甚大な被害を引き起こしていると指摘した。

 リゾートタウンのクルとマナリは長年にわたり、欧米のみならず国内の旅行者にも人気で、1000軒近いホテルが営業している。喫茶の屋台からタクシーの運転手まで、観光業に携わる人々は禁止がすぐに解除されないのではないかと将来に不安を感じているという。

 だが、マナリで最も古いホテルの一つ、バノン・リゾーツ(Banon Resorts)を経営するラジュ・バノン(Raju Banon)さんは、長期的に観光業を続けていくためにも、環境の保護が必要だと語る。「裁判所の命令が実行されなければ、マナリは終わる。そうなれば、我々も同じ運命をたどることになるだろう」とバノンさんは述べた。(c)Relaxnews/AFPBB News