暴行被害の11歳少女が出産、当局が中絶を拒否 パラグアイ
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【8月14日 AFP】南米パラグアイで、母親の交際相手から性的暴行を受けて妊娠した11歳の少女が13日、出産した。主治医が明らかにした。
昔からカトリック教徒が多いパラグアイでは、母親の生命に危険が及ぶ可能性がある場合を除いて中絶は違法。4月に当局が少女の妊娠を継続させるべきという判断を下すと、国内外で大論争が巻き起こった。
少女は10歳の時に性的暴行を受け、今年5月に11歳になった。妊娠の経過観察を行ってきた主治医によると、妊娠37週を迎えた少女は今月13日、帝王切開で3500グラムの女児を出産。女児はスペイン語で「奇跡」を意味する「ミラグロス(Milagros)」と命名された。
赤十字病院(Red Cross Hospital)の院長は少女の出産について、「他の帝王切開と同様、合併症もなく、違っていたのは(母体の)年齢だけだった」と語った。少女が新生児に授乳できるのかという質問に対しては、「母親としてどれくらいのことができるのか見守っていく」と答えた。
少女を妊娠させたヒルベルト・ベニテス(Gilberto Benitez)容疑者(42)は5月に身柄を拘束され、現在強姦(ごうかん)罪での裁判開始を待っている。有罪と認められた場合、12~15年の禁錮刑に処される可能性がある。また少女の母親も、ネグレクト(養育放棄)容疑で逮捕されているが、妊娠中の少女への面会は許可されていた。
この事件はパラグアイ国外まで大きな波紋を広げた。国連(UN)の専門家らは、少女の中絶検討を拒否したパラグアイ政府を批判。また国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)は、パラグアイの少女たちは性犯罪者に対する十分な保護を受けられていないと指摘した。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は、少女が命を落とさなかったのは幸運だったとして、同日パラグアイ政府に対し厳しい中絶禁止法を廃止するよう要請した。
アムネスティのエリカ・ゲバラ(Erika Guevara)南北アメリカ担当ディレクターは、少女の命に別条がなかったからといって、「少女の妊娠は非常に危険であるという動かしようのない証拠、また性的暴行被害を受けた子どもであるという事実にもかかわらず、少女の健康と生命、尊厳を運に任せたパラグアイ当局の判断により、少女が受けた人権侵害の言い訳にはならない」と糾弾した。(c)AFP