【8月13日 AFP】手術の前後やその際中に音楽を聴くことに、不安や鎮痛剤への依存を減少させる効果があるとの研究論文が12日、発表された。

 研究チームは、合計7000人近くの患者を対象とした70件以上の臨床試験について調べた結果、大半の場合、音楽には強力な鎮痛効果があることが分かったとしている。研究論文は、英医学誌ランセット(Lancet)に掲載された。

 英ブルネル大学(Brunel University)准教授で論文執筆者のキャサリン・ミーズ(Catherine Meads)氏は、手術後の痛みを10段階の尺度で表すと、標準的な手術と比較して、平均約5分の1(2段階)の痛みの減少がみられたと説明する。研究では、脳や中枢神経系以外のすべての手術が対象となった。

 論文によると、こうした効果は、音楽の種類や曲を選んだ人間にかかわらず、同様に示されたという。

 また、音楽による鎮痛効果は、患者の意識がある場合においてより大きいことが確認されたが、全身麻酔をかけられた状態でも痛みの感覚に減少がみられた。

 音楽と癒しの関係をめぐっては、古代ギリシャの哲学者で音楽家でもあったピタゴラス(Pythagoras)により実践されていた「音楽療法」にまでさかのぼることができる。ピタゴラスは弦楽器を好んでいたとされている。

 しかし、音楽が不安や痛みを和らげる仕組みや理由については、まだ解明されていない。患者の注意が目の前の関心事からそれるためとする研究者がいる一方で、音楽そのものが持つ「特別な能力」に注目する研究者もいる。(c)AFP/Marlowe HOOD