【8月11日 AFP】ラムジャナム・マウリヤ(Ramjanam Mauriya)さん(65)はここ2年ほど、自分が幽霊ではなく生きていることを証明するために書類の山を抱えて、インド北部ウッタルプラデシュ(Uttar Pradesh)州アーザムガル(Azamgarh)の裁判所を数えきれないほど訪れている。マウリヤさんはAFPに「もどかしい。生きているのに、死んでいると言われるなんて」と話した。

 ウッタルプラデシュ州には土地の所有権を狙った、たちの悪い身内の策略で戸籍上、死んだことにされてしまった人たちが数百人いる。マウリヤさんもその1人だ。先祖代々の土地の相続分を増やしたいがために、役人に賄賂を贈って、自分を死亡したことにしたのは実の兄だと疑っている。

 きょうだいだけではない。いとこやおい、時には自分の息子までもが、役人に賄賂を渡して記録を改ざんさせたり、破棄させたりしている。こうした事例のほぼ全てがウッタルプラデシュ州で起きている。インドの州の中で最も人口が多く、汚職や犯罪が深刻なことでも知られる。とりわけ、州都ラクナウ(Lucknow)の東約300キロにあるアーザムガルでは、ここ数十年で土地の争奪戦が激しくなっており、こうした戸籍抹消の中心地となっている。

 ラール・ビハーリ(Lal Bihari)さんは40年ほど前、アーザムガルに持っていた3エーカーの土地が、いとこの手に渡っていたことに気付いた。いとこの1人が堕落した地元の役人と共謀して、ビハーリーさんを死亡したことにしたのだ。やっとのことで自分は偽装の被害者であることを裁判所に納得させたビハーリーさんは、自分と似た悪夢のような体験に捕らわれている人たちを支援するため「死者の会(Mritak Singh)」を立ち上げた。

 死んだことにされると「自分の存在を疑い始めることさえある」とビハーリーさんは話す。生存を証明する活動の一環として、総選挙に首相候補として出馬したこともあるビハーリーさんの会は、全国で200件前後の戸籍抹消事件の被害者を支援しているという。